2017 Fiscal Year Research-status Report
湖沼堆積物コアの亜鉛同位体比に基づく中国大陸からの亜鉛の越境輸送評価
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16K00622
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
坂田 昌弘 静岡県立大学, 食品栄養環境科学研究院, 教授 (20371354)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 亜鉛 / 亜鉛同位体比 / 堆積物コア / 水質汚染 / 越境汚染 / 発生源 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.亜鉛同位体比に関する発生源データベースの構築 中国大陸から日本に輸送される大気エアロゾルのZn濃度およびZn同位体比に関するデータを取得するため、国立水俣病総合研究センターの丸本幸治氏が、2013年5月から2015年4月までの期間に毎週捕集したエアロゾル(ハイボリュームエアサンプラーにより石英繊維フィルター上に捕集)について分析を行った。これにより、季節毎のZn濃度の変動を明らかにした。なお、Zn同位体比の測定については、平成29年度内での実施はできず、平成30年度に実施することとした。 2.日本国内の人為発生源に由来する亜鉛同位体比の歴史トレンド解析 東京湾で採取された堆積物コアを対象にして、Zn濃度とZn同位体比の歴史トレンドを解析することにより、東京湾のZn汚染源を評価した。コア中のZn濃度は1950年代以降に急増しており、Zn同位体比の鉛直分布と類似していた。このことから、1950年代以降のZnの汚染源は、大きなZn同位体比を有することが示唆される。そこで、2成分エンドメンバーモデルを適用して、そのZn同位体比を推定した結果、+0.49‰の高い値が得られた。発生源データベースを基に、Zn汚染源を評価した結果、ごみ焼却灰、自動車・道路粉じんおよび下水処理水のZn同位体比は上記の値よりも低いことから、それらの発生源は東京湾のZn汚染に寄与していないことがわかった。東京23区内には数多くの亜鉛めっき工場が存在し、その排水のZn同位体比は高いことが知られている。古い時代には法的規制が緩く、未処理の排水が直接河川に放流された可能性がある。また、東京湾に流入する主要河川水のZn濃度とZn同位体比との間には正の相関関係がある。これらのことから、東京湾のZn汚染源は、過去に亜鉛めっき工場排水のZnで汚染された河床堆積物が寄与していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長崎県平戸市で捕集された大気エアロゾルのZn同位体比の測定について、平成29年度内に実施することはできなかったが、試料分解については終了しており、Znのイオン交換のみであることから、研究計画に沿っておおむね順調に進展しているとみなすことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
1.亜鉛同位体比に関する発生源データベースの構築 長崎県平戸市で捕集した大気エアロゾル試料のZn同位体比を測定する。その値と、後方流跡線解析から得られたエアロゾルの捕集期間中にエアマスが当該地点に到達するまでの経路(エアマスが通過したエリア)との関係を明らかにすることにより、中国大陸からのZnの越境輸送の影響を評価する上で必要なZn同位体比の発生源データベースを構築する。 2.宍道湖・中海堆積物コア中の亜鉛の発生源評価 宍道湖・中海では、堆積物上層部(1980年以降)にZn濃度の上昇トレンドが観測される。その汚染源を解明するため、堆積物コア中のZn濃度とZn同位体比を測定し、Zn同位体比の歴史トレンドおよびその値とZn濃度の関係を明らかにする。また、平成29年度に実施した東京湾堆積物コアの場合と同様に、自然由来Znと人為由来Znの2成分エンドメンバーモデルを適用することにより、人為由来Znの同位体比を求める。そして、本研究で構築した発生源データベースを基に、堆積物上層部のZn濃度の上昇には中国大陸からの越境輸送が寄与しているのか、あるいはローカルな排水等による汚染源が寄与しているのかについて評価する。
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Causes of Carryover |
(理由) 主な理由として、平成29年度中に実施する予定であった長崎県平戸市の大気エアロゾルの亜鉛同位体比の測定が未実施であったため、これに必要な物品費や旅費を使用しなかったことが挙げられる。 (使用計画) 次年度使用額(差額分)は、上記の未実施項目の測定に使用する。
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Research Products
(2 results)