2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K00624
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Research Institution | The Open University of Japan |
Principal Investigator |
川原 靖弘 放送大学, 教養学部, 准教授 (10422403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片桐 祥雅 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所グリーンICTデバイス先端開発センター, 研究マネージャー (60462876)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 脳機能計測 / 事象関連電位 / 騒音 / 連続刺激 / 環境音 |
Outline of Annual Research Achievements |
持続する騒音を聴取した際の脳機能の変化を明らかにするために、二種類の実験を行った。一つ目の実験では、無音部分の挿入頻度と提示時間が異なる音刺激を4種類用意し、聴取時の脳波を用いて事象関連電位および特定周波数成分のパワーの解析を行い、連続した音刺激及び無音部分の挿入が脳活動に与える作用を調査した。二つ目の実験では、周期的な音量変化周期を持つ機械騒音と周期的な音量変化を持たない自然環境音を聴取させ、聴取中の脳波を計測し、深部脳活動と正の相関を持つとされるα2帯域のパワーを算出することにより、それぞれの環境音の脳機能への作用を調査した。 一つ目の実験において、使用した音刺激は1000Hzの純音を用い、500ms間隔の連続音および音:無音部分が3:1、4:1、5:1の3種類の無音挿入条件の計4種類の連続音刺激を提示した。それぞれの条件における連続音聴取時の被験者脳波の事象関連電位を用い、一次感覚受容の抑制作用に関わるP50のピーク値の変化に注目したところ、一定間隔の連続音刺激の入力による脳の抑制作用と、無音部の挿入による抑制作用の緩和効果を確認した。連続提示条件においては、被験者差が見受けられるものの、400回程度の連続聴取時まで抑制効果が継続的に増強されることが示された。2つ目の実験においては、聴取前と聴取時の被験者の脳波を計測し、脳波α2帯域パワーの平均値を比較した結果、自然環境音条件においては聴取時に増大し有意な差が認められたが、機械騒音条件では聴取時に減少する傾向があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・ワイヤレスの生体信号受信装置を利用し電気ノイズを発生しない実験システムを構築するとともに、音刺激再生のために合成波形を出力可能な発音プログラムをシステムに実装した。 ・無音部を挿入した数パターンの連続音刺激を利用して、無音部の挿入が連続音刺激による脳機能抑制に対して緩和作用を持つことが分かった。 ・同一する音刺激の連続提示による脳活動に対する重畳的な抑制作用を確認した。 ・実際の環境音聴取時の脳波成分解析により、自然環境音と人工的な環境音とで脳活動への影響に差が出ることを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
脳の抑制作用を持つ音刺激の特性を特定するため、今回報告した時間的特性の与える作用をさらに刺激条件を細かくすることで精査するとともに、環境音に近い連続的な変化をもつ音刺激を用いて実験を行う。音刺激の同一性/定常性を弱め、変化を与えることで感覚抑制の作用を緩和させる効果があることを仮定し、 1.(時間特性) 無音部分の提示時間を変化させた刺激を用いて、無音部分の長さによる感覚抑制緩和作用の効果を調査する。 2.(音波形の特性) 提示する刺激の音波形を変化させることで抑制作用を緩和する効果を調査する。
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Causes of Carryover |
平成29年1月における環境刺激-生理計測システムの構築過程において、環境刺激の強度に関し、複数の実験場所において同じレベルを実現する必要性が生じ、また解析をよりやりやすくするための同期信号システムの導入を検討したが、必要機器の選定及び納品に要する期間が足りず、次年度に使用せざるを得なかった。また、採択時期が夏以降であったので、急いで計画を進める上で機器選定に十分な時間をとれなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
音圧測定器、スピーカー、アンプについて、既購入品と同レベルの環境音再生ができる製品を購入し、信号同期用システムの購入も行う。
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