2017 Fiscal Year Research-status Report
山岳湖沼の環境変化に応答した水草・大型藻類の多様性の変動予測
Project/Area Number |
16K00633
|
Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
芹澤 如比古 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (80408012)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 光合成 / 水平・垂直分布 / フローラ / 生育量 / 分布下限水深 / 水草 / 湖沼 / 光合成最適温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
山岳湖沼の環境変化に応答した水草・大型藻類の多様性の変動を予測することを目的に,平成29年度は西湖より水草3種(クロモ,コカナダモ,トリゲモ)を採集し,水温3条件(15,20,25℃),光強度7条件(400,200,100,50,25,12.5,0μmol/m2/s)でプロダクトメーターを用いて光合成の測定を行った。光-光合成曲線及び温度-光合成曲線の特性から,クロモは高温に,コカナダモは低温に適しており,富士五湖の水草の中で最も深所まで生育するクロモの光補償点はより浅い水深帯に生育するコカナダモより低いことがわかった。一方で,比較的浅所に生育するトリゲモの光補償点はクロモよりも低いことが判明し,トリゲモの分布下限水深を規定しているのは種子の発芽に関する生理特性など他の要因であることが示唆された。 また,西湖に25定点を設定してスキューバ潜水調査と採集器の投入れ調査を行い,水草・車軸藻類の分布状況を調べた。東西南北岸では透明度の測定と,潜水による水深10または15mまでの定線調査[定線の両脇2mの範囲で生育量を4段階(多い,普通,稀,極稀)評価]を行った。これまでで最多となる15種(水草11種,車軸藻類4種)が確認され,オオササエビモとヒメホタルイを西湖の新産種として発見するとともに,近年確認されていなかったエゾヤナギモを再発見できた。西湖の優占種は出現頻度(出現定点数/総定点 数×100)と生育量からクロモ,セキショウモ,フジエビモの3種と判断された。定線調査を行った4定点の透明度は8.2-9.1mであり,分布下限水深は水草ではクロモが8-11m,車軸藻類ではヒメフラスコモが9-15mで,各種の生育量の多い水深は定点により異なっていた。透明度が最大の南岸の定点ではヒメフラスコモの分布下限水深が15mと最も深く,透明度が水中光量を反映していることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2017年度までに富士五湖で月1回の水質環境調査と,実験室での光合成測定環境の整備が完了し,3種について光合成を測定することができた。しかし,潜水による分布調査は,2016年度に精進湖で確立した調査手法を取り入れて全定点で潜水調査により行おうとしたが,精進湖よりも面積が大きく,水生植物の分布下限水深が深い他の湖では,当初設定した定点全てで潜水することは高所潜水となるため,安全面から非常に問題が大きいことが発覚し,2017年度は西湖で潜水調査定点を10定点に絞って行い,他の15定点では小型船舶や岸からの採集器の投入調査に変更して行った。しかし,残りの三湖については調査定点の選定のみで,現地調査までは行えなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
2017年度に行った西湖での潜水調査手法を応用して,2018年度には残り三湖(山中湖,河口湖,本栖湖)で潜水による水生植物の分布調査を行う予定である。なお,西湖と同様に高所潜水となるため,潜水調査を行うのは各湖10定点程度に絞り,残りの10定点は小型船舶や岸からの採集器の投入調査で行うこととする。また,光合成特性についても,潜水調査が終了次第,富士五湖各湖および五湖の優占種を選定し,調べていく予定である。
|