2016 Fiscal Year Research-status Report
ラオスの在来稲作における水田草本植物の多様性維持機構
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16K00634
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小坂 康之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70444487)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生物多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジアで広大な面積を占める水田は、主食である米を生産する場でありながら、多様な生物を育む場として知られる。本研究の目的は、農業慣行によって維持される水田環境と野生草本植物の生活史の関係、周囲の土地利用と比較した水田の外来植物相、水田の野生草本植物を移植・栽培する事例を調査し、人為のもとでの植物多様性維持機構を解明することである。研究1年目となる2016年度には、2016年11月14-21日と2017年3月17-27日に、ラオス中部ビエンチャン県トゥラコム郡とナーサイトン郡、ラオス北部シエンクワン県ペーク郡、フアパン県サムヌア郡の水田と市場で、水田草本植物の現地調査を行った。稲刈り直後の11月には、北部の水田に、タゴボウモドキ、キダチキンバイ、アゼナの仲間、ヒメノボタン、センブリ、ゴマクサ、キカシグサの仲間などが開花していた。サムヌア郡では、稲刈り後の水田で稲わらを焼き、そこにニンニクやアブラナ科葉菜を作付する裏作が行われる水田がみられた。水路脇の湿地にビエンチャン県で採集したシソクサの仲間を移植し、香草として利用する事例も観察された。雨期に水田にティラピアを放して養魚する事例も聞き取りによって明らかにされた。市場ではデンジソウ、ミズアオイ、イボクサ、ロベリア、ツボクサなどが混ぜて販売され、野菜として食されていた。中部の水田には、タゴボウモドキ、ケミズキンバイ、ノジアオイ、キカシグサの仲間、シソクサの仲間などが開花し、市場ではシソクサの仲間、ツボクサ、オオバコエンドロなどが販売されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、おおむね順調に進展していると評価される。2016年度の研究計画は、ラオス北部の冷涼な亜熱帯照葉樹林帯に位置するフアパン県サムヌア郡と、同中部の温暖な熱帯モンスーン林帯に位置するビエンチャン県に調査村を選定し、農業慣行によって維持される水田環境と野生草本植物の生活史の関係、周囲の土地利用と比較した水田の外来植物相、水田の野生草本植物を移植・栽培する事例を調査することであったが、いずれも達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度以降は、2016年度の調査項目の継続調査を行う。特に季節ごとの植物相の記録のために、毎年異なる時期に調査を行う。そして発芽・開花・結実の季節性を可能な限り詳細に記録する。また化学肥料と除草剤の使用、スイギュウから耕耘機・トラクターへの転換、二期作の導入により、水田の野生草本植物相がどのように異なるかを分析するため、同一村落内で、異なる条件の水田を複数選択して、コドラート調査を行う。水田植生の南北間差を分析するために、中部ビエンチャン県の諸郡や、南部サワンナケート県チャンポン郡も予備調査地として考慮する
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Research Products
(5 results)