2018 Fiscal Year Research-status Report
ラオスの在来稲作における水田草本植物の多様性維持機構
Project/Area Number |
16K00634
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小坂 康之 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 准教授 (70444487)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 水田植生 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジアで広大な面積を占める水田は、主食である米を生産する場でありながら、多様な生物を育む場として知られる。世界中で淡水湿地の環境改変がすすむなかで、湿地生物の生息地としての水田の重要性が指摘されている。本研究の目的は、東南アジアの水田において、農作業によって維持される水田環境と野生草本植物の生活史との関係、周囲の土地利用と比較した水田の外来植物相、水田の野生草本植物を移植・栽培する事例を調査し、人為のもとでの植物多様性維持機構を解明することである。研究3年目となる2018年度には、2018年4月28日から5月7日まで、ラオス中部ビエンチャン県、北部シエンクワン県、北部フアパン県において、耕起・移植前の水田植生と植物資源利用や、市場で販売される野生植物の調査を主に行った。ビエンチャン県では、ナムグム川を水源とする灌漑用水によって水稲二期作の行われる水田があり、そこではかつて雨季のみにみられた一年生の湿生植物が通年で生育するようになったことが明らかになった。また水がかりの悪い高みの水田を畑に転換し、水田の畦からツボクサやドクダミを移植して栽培する事例が確認された。シエンクワン県ポンサワン近郊のモンの村落では、水田やその周辺で採集した薬草を乾燥し、1975年の革命後にアメリカに移住したモンの人々に送る事例が確認された。フアパン県サムヌア近郊の水田では、耕起や畦塗りを行う季節の水田植生を記録した。県庁所在地であるサムヌアの近郊農村では、雨季初めの耕起の時以外にはスイギュウなどの家畜の放牧が禁止され、少し離れた山の上の集落に家畜を預けていた。このような家畜の放牧場所の移動は、水田や周辺の植生に影響を与えると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、おおむね順調に進展していると評価される。2018年度の研究計画は、ラオス北部の亜熱帯林帯に位置するフアパン県と、ラオス中部の熱帯モンスーン林帯に位置するビエンチャン県において、農作業によって維持される水田環境と野生草本植物の生活史との関係、周囲の土地利用と比較した水田の外来植物相、水田の野生草本植物を移植・栽培する事例について、2016-2017年度に完了しなかった項目を継続調査することであった。2018年度にはラオスのビエンチャン県とフアパン県において、耕起・移植前の水田植生と植物資源利用を中心テーマとし、特に水田を畑に転換して水田の畦からツボクサやドクダミを移植して栽培する事例について、新しい知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は最終年度のため、2018年度までの調査で不足している情報について重点的に現地調査を行う。比較調査地として予定していたラオス南部を、ベトナム南部メコンデルタに変更し、メコン川流域全体に視野を広げて、水田植生の調査・分析を行う。また世界の水田植生に関する文献をレビューし、メコン川流域の水田植生と人々との関わりの特徴を明らかにする。そして4年間で得られた知見をまとめ、学会発表や論文投稿のかたちで、成果を発表する。
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Research Products
(5 results)