2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K00654
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
横井 春比古 宮崎大学, 工学部, 教授 (00253815)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 焼却灰 / 培地 / 微細藻類 / バイオ燃料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、焼却設備から排出される焼却灰を原料に用いて、微細藻類のChlorella vulgarisを培養できる新規な培地を開発し、焼却灰培地で培養した藻体から油分(脂質)を抽出・生産するとともに、脂質を抽出した藻体を培地原料に用いて水素発酵により水素も生産する新しいバイオ燃料生産技術の開発を目的としている。二年目の平成29年度は、初年度に開発した「鉄塩無添加焼却灰培地」をもとにして、C. vulgarisの培養で脂質を生産するための最適な培地条件について検討を行った。 まず、光照射下で5%の二酸化炭素を含有する空気を通気しながらC. vulgarisの培養を行い、生育と脂質生産に及ぼす鉄塩無添加焼却灰培地に添加する窒素源の影響について検討した。C. vulgarisは硝酸カリウムと尿素で良好に生育するが、細胞内の脂質含有率は尿素よりも硝酸カリウムの方が高く、脂質生産には窒素源として硝酸カリウムが適すると思われた。さらに、焼却灰培地中の硝酸カリウムの添加濃度が高いほど生育量が増加し、脂質生産量も増大することが分かった。 次に、鉄塩無添加焼却灰培地に有機性炭素源を添加して光照射下でC. vulgarisの通気培養を行い、生育と脂質生産に及ぼす影響について検討した。鉄塩無添加焼却灰培地にグルコース、グリセリン及び酢酸を添加すると生育の促進効果が認められ、特にグルコースを添加した場合には生育速度及び脂質生産速度が大幅に増大することが分かった。また、鉄塩無添加焼却灰培地中の硝酸カリウムとグルコースの濃度を高くするとクロレラの生育量及び脂質生産量が増加し、1000mg/Lの硝酸カリウムと10g/Lのグルコースを添加したときに脂質の生産特性が最も良好であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目の研究目的は、初年度に開発した鉄塩を添加する必要のない鉄塩無添加焼却灰培地を用いて、C. vulgarisを培養して藻体と脂質を生産する上での最適な培地条件を明らかにすることである。 鉄塩無添加焼却灰培地に添加する窒素源としては硝酸カリウムが適し、有機性炭素源として特にグルコースを添加すると、C. vulgarisの生育量と生育速度、並びに脂質の生産量と生産速度が増大することが分かった。さらに、脂質生産に適する硝酸カリウムとグルコースの添加濃度を明らかにした。 以上のように、鉄塩無添加焼却灰培地に添加する窒素源と有機性炭素源の種類と濃度を検討して藻体及び脂質を良好に生産するための培地条件を明らかにしたことから、現在までの研究の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画に基づき、最終年の平成30年度は、二年目に明らかにした脂質生産のための鉄塩無添加焼却灰培地を用いてC. vulgarisを培養し、脂質を抽出した後の藻体を培地原料に活用して、水素発酵菌で水素を生産する技術を開発する。 脂質抽出後の藻体には、C. vulgarisの細胞内成分である糖類、タンパク質及び各種ミネラル等が残存すると推測される。そこで、脂質抽出後の藻体を水素発酵の培地成分に活用して、水素発酵菌Clostridium beijerinckiiで水素を生産するための培地条件及び発酵条件等について検討する。まず、C. vulgarisの藻体を培地成分に用いて水素発酵を行う場合に添加が必要な他の培地成分について検討し、水素生産のための最適な培地条件を明らかにする。さらに、C. beijerinckiiでの水素発酵では培養温度や培養pHが水素生産に重要であるため、藻体を利用した培地での水素生産に及ぼす培養温度及び培地pHの影響を検討して最適な発酵条件を明らかにし、C. vulgarisの藻体を活用する水素生産法を確立する。
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Causes of Carryover |
平成29年度に計画していた研究内容の実施において、当初予算の物品費300,000円のほぼ全額を使用して135円が残った。未使用額は、次年度の物品費400,000円に加算して、脂質抽出後の藻体を水素発酵の培地成分に利用する実験での実験器具や試薬等の購入費の一部に充てる予定である。
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