2017 Fiscal Year Research-status Report
次世代自動車普及に伴う課題導出と対策に関する研究-適正処理と再資源化を中心に-
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16K00668
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
劉 庭秀 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (70323087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
茂木 創 拓殖大学, 政経学部, 准教授 (10407661)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 次世代自動車 / ハイブリッドカー / 使用済みバッテリー / 環境影響評価 / 中古車輸出 / 拡大生産者責任 / 国際資源循環 / 越境環境問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年は、まず各国の自動車メーカーリサイクル関連機関、省庁、リサイクル現場のインタビューや質問票調査を行った。また、EU諸国、米国、中国、日本を中心に、次世代自動車普及政策の特徴と課題、拡大生産者責任原則の変遷を考察・分析した。 日本は次世代自動車の技術開発と販売歴史が長いものの、使用済み次世代自動車や次世代自動車用バッテリーのリユース・リサイクルの政策方針が明確ではない。今年はハイブリッドカーのバッテリーを事例に、最新文献、質問票調査、フィールドワークで入手した(回収方法、物質組成とフロー、流通情報)を利用し、Life-Cycle Assessmentを行った。さらに、ハイブリッドカーの運行状況・流通・回収・廃棄・再資源化のシナリオを設定し、条件変化によるシミュレーション分析を行った。自動車メーカーは独自に、ハイブリッドカーの「使用済みニッケル水素電池」の再資源化の取組を始めており、バッテリーのリユース及びリサイクルスキームを構築しつつあるが、バッテリーの回収率が低く、円滑な運用には至っていない。実際、大半のハイブリッドカーは資源性の高いニッケル水素バッテリーとともに中古車として輸出されており、国際資源循環と越境環境問題を引き起こすことが懸念される。言い換えれば、使用済みハイブリッドカーの回収スキームを確立し、リユースとリサイクルをトータルで考えた国際資源循環の仕組みを構築しなければ、次世代自動車のリサイクル技術と政策を確立したとは言えず、国際的な拡大生産者責任原則も曖昧である。 一方、使用済みバッテリーを回収し、自動車補修用バッテリーに再生すれば、製造段階に使われる金属資源の消費、二酸化炭素の排出量や廃棄物発生量を軽減できる。即ち、今後、使用済みニッケル水素バッテリーを効率よくリユース、リサイクルするためには、国際的なリユース・リサイクルネットワーク構築が重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年に予定としていた日本の自動車メーカー、リサイクル関連協会、省庁への質問票調査が行われ、中国の自動車メーカーとリサイクル現場へ、モンゴル国の政府機関、リサイクル現場のインタビュー調査、東欧(ブルガリア)の中古車市場とリサイクル現場の現地調査を行うことができた。また、世界各国における次世代自動車戦略の思惑と課題についても論点を整理し、第10回アジア自動車環境フォーラム、廃棄物資源循環学会の国際セッションで、これらの研究成果を発表した。 また、日本から大量の中古ハイブリッドカーが輸出され、すでに使用済みバッテリーが発生し始めている、モンゴル国のリユース及びリサイクル実態を詳細に把握することができた。さらに、日本から発生している使用済みニッケル水素バッテリーのリユース、リサイクル状況を具体的な事例に基づいて分析し、詳細なデータを入手した。そして、使用済みハイブリッド自動車のバッテリーを事例に、様々な条件とシナリオを設定してライフサイクルアセスメント(Life-Cycle Assessment)を行い、定量的な分析結果を示した上、研究成果を廃棄物資源循環学会東北支部の研究発表会で発表した。但し、モンゴル国内の使用済み自動車の発生状況とマテリアルフローを把握することは、非常に難しく、今年も引き続き、調査分析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は日本及び次世代自動車流通・回収における関係各国の社会的指標を用いた「社会ネットワーク分析」を行う予定であったが、前年のシナリオ分析・シミュレーション分析の結果、越境環境問題と国際資源循環を考慮した分析がより重要であると判断したため、日・モンゴル間のハイブリッド自動車の流通を事例に、より具体的な分析を進めることにした。特に、モンゴル国の国道交通省、産業省、廃棄物協会、モンゴル自動車リサイクル協会、現地のトヨタ自動車販売店、JICAモンゴル事務所などからも高い関心を示しており、モンゴル科学技術大学・モンゴル国立大学との連携を図りながら、社会技術(使用済み自動車のバッテリーの有効利用方法:例えば、①家庭用の蓄電池としての利用可能性、国際資源循環ネットワークとリサイクル技術の国際協力の可能性)としての発展可能性を探る予定である。 そして、次世代自動車普及から中古車流通・回収・廃棄・再資源化までのライフサイクルにおける利害関係者の特徴、環境影響を評価分析し、実効性の高い環境技術と政策のあり方を探る。また、国際資源循環と越境環境問題の視点に基づいて、次世代自動車に係る関係各国の貿易や関連法制度の実態を総括し(主に日本・韓国・中国・モンゴル・ロシアなど)、多国間における整合性と妥当性を検証する。以上の考察分析を通して、最終的に次世代自動車の普及とリユース・リサイクルに関する国際協力のあり方について政策提言を行う。最終的に、今までの研究成果から導出された研究課題をベースに、次のステップの大型研究プロジェクトとして発展させる計画である。
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Research Products
(11 results)