2017 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な政治経済システム構築に向けてのレント・レントシーキング実証分析
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16K00685
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
島本 美保子 法政大学, 社会学部, 教授 (70245629)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | レント / 財務データ / グローバル企業 / 政治的支出 / R&D支出 / 政治経済学 / 貿易 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでのレント算出分析は、既存の各国における統計の製品の生産量や価格を使用して産業単位でレントを算出するというパターンであった。しかし産業ごとの製品価格といっても、実際は各企業の製品によって単価は異なる。さらに費用となると費目ごとの数量や価格の統計データは入手困難で、かなりの読み替えや推定が入らざるをえない。企業ごとの正確な決算データである財務諸表データをもとにできればより正確な実証分析が行える。そこで、コブ・ダグラス型の生産関数の場合の独占モデルの静学的及び動学的最適条件を満たす条件式を展開し、生産量や生産要素投入量を売上額や生産要素投入額で代用できる条件式に変換することができる方法を発見した。これによって財務諸表データをもとに各企業のレントやその動態を算出することができた。 この方法を用いて、日本の大企業の産業別のレントとそれらの政治的支出、そしてR&D支出の関係について分析した。製造業を中心とする29産業部門の財務データをもとに数値解析ソフトMatlabでレント額を算出し、企業の政治的支出については、東洋経済新報社のCSRデータ全般編と、自民党の国民政治協会の政治資金収支報告書から企業団体献金を産業ごとに抽出したものを用いた。R&Dデータに関しては、財務諸表データから「開発費・試験研究費」を抽出したものを用いた。 多重回帰、およびパネルデータ分析を行った結果、企業の政治的支出と企業のレント額の間には相関関係が認められたが、他方R&D支出額とレント額の間には相関関係が認められなかった。 グローバル企業のレント計測の方法論の探求とともに、本年はグローバル企業(収穫逓増産業)を中心とした貿易自由化が分配に与える影響について貿易理論からの整理も行った。収穫逓増産業や不完全競争市場においてストルパー=サミュエルソン定理がどのような条件下において成り立つのかについて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度この研究課題における最大の懸案であった財務データによるレント導出の理論ベースを完成できた。またこれを用いて日本の大企業について産業別にレントの動態を導出し、各産業の政治的支出やR&D支出との関係をパネルデータ分析によって分析することができた。結果的にレントと政治的支出の相関関係を数量的に算出できた。この結果については現在英文ジャーナルに投稿中。ただし日本については政治的支出についての時系列データの入手が難しいため、両者の因果関係について特定することができなかった。 また最終的な分析対象であるグローバル企業の貿易が分配に与える影響について理論的に整理することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
日本についてのレントと政治的支出の関係の実証分析は、政治的支出データの時系列が短いため困難であることが分かった。最終的な分析対象はグローバル企業なので、次にアメリカの財務データと政治的支出のデータを用いて両者の関係を同様の分析手法で分析したい。
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Causes of Carryover |
アメリカの政治的支出のデータを入手するために、購入できるルートを探索中のため、未だ支出されていない。翌年度分と合わせて、アメリカの政治的支出データの探索のために使用する計画である。
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