2018 Fiscal Year Research-status Report
伝統知を用いたESDモデルの社会実装と国連「SDGs」における主流化の手法研究
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16K00686
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
古澤 礼太 中部大学, 中部高等学術研究所, 准教授 (70454379)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ESD / 持続可能な開発のための教育 / 伝統知 / 伊勢・三河湾流域圏 / SDGs / 持続可能な開発目標 / RCE / グローバル・アクション・プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、日本の東海三県(愛知県 岐阜県 三重県)において、地域の伝統的な知恵(伝統知)を持続可能な開発のための教育(Education for Sustainable Development:ESD)に活用するための手法開発のための参加型調査および資料分析をおこなった。東海三県を包み込む自然環境による地域区分としての伊勢・三河湾流域圏(伊勢湾と三河湾に注ぎ込む河川の流域)で継承されている伝統的な慣習や産業の事例を収集・分析し、地域課題解決のための学習的要素を抽出した。また、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)の目標達成に貢献し得る伝統知事例を、SDGsの17目標で分類し、同分野の活動主体の相互学習や、異分野間の相互関連を学ぶための手法を開発した。 海外研究では、植民地都市であるガーナ共和国首都アクラで調査をおこなった。西洋文明とアフリカ文化の結節点としてのアクラで独自の文化を発展させた先住民族ガの生存戦略をあきらかにするなかで、持続可能な社会づくりに寄与する伝統知の抽出を試みた。その成果は、書籍および論文で発表した。 伝統知を用いたESD推進に関する活動・研究成果は、ユネスコのESDに関する「グローバル・アクション・プログラム(GAP)」の国際会議(平成30年4月:コスタリカ)および国連大学のESD地域拠点(RCE)の国際会議(平成30年9月:オーストラリア、平成30年12月:フィリピン)で報告および情報発信をおこなった。これにより、ESDを各国で推進する有識者との実践的・学術的交流を通して、持続可能な開発目標(SDGs)へのESDの貢献について国際的な検討をおこなうことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の研究活動は、国内活動および国外活動を通して概ね順調に進んでいるが、当初計画を鑑みると、本研究課題の「SDGsにおけるESDの主流化」および「伊勢・三河湾流域圏における伝統知ESD手法の開発」に関する研究がやや遅れている。 前者の理由は、SDGsに関連したESD推進の国際的な指針確立が予想以上に遅れたことによる。ESDを推進するユネスコが、GAPキーパートナーネットワークにおいて本格的にSDGsへのESDの貢献策を議論開始したのは2018年5月以降であった。このため、SDGsにおけるESDの国際的な推進方針の把握がやや遅れた。 後者の遅れについては、参加型調査の対象である中部ESD拠点(RCE Chubu)における当該年度の主たる活動が持続可能な開発のための政策教育に重きが置かれたため、伝統知を活用するESD手法の構築に向けた多様な主体の参加による取り組みの進展が少なかったことによる。 今後は、SDGsに関連する活動の中で、多様な主体の参加のもと、伝統知を活用するESD手法の発展と研究を迅速に進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策について、地域的には、伊勢・三河湾流域圏版SDGsの設定をおこなう過程で、伝統知を活用したESD手法を提案し、中部ESD拠点活動を通して社会実装を試み、その過程をあきらかにする。 国際的には、自然環境と文化の多様性の理解を基盤としたESDによるSDGsの達成に寄与する手法研究を継続する。サステナビリティに関する国際的な動向を見据えながら、本研究の成果を効果的に情報発信し、SDGsにおけるESDの主流化を試みる。具体的には、ユネスコが2015年から2019年までに推進してきたESDの「グローバル・アクション・プログラム(GAP)」が終了し、その後、SDGsの達成に向けた新たなESDプログラムが開始される。そのため、伝統知を活用したESD手法が、GAPの成果のなかでどのように位置づけられ、2020年以降のESD活動に反映されるかが課題である。 以上の問題意識のもと、最終年の研究活動を推進する予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究活動の進捗状況にはやや遅れが発生している。その理由は前述の通り、SDGsに関連したESD推進の国際的指針確立の予想以上の遅れ等による。このため、助成金使用状況にも若干の遅れが発生した。 助成金の使用計画は、最終年度の研究成果取りまとめワークショップ開催費用、論文投稿料、学会参加費、および調査機材(消耗品)・書籍の購入費にあてる。
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