2018 Fiscal Year Research-status Report
河川のはん濫危険水位情報に関する日常的な危機管理のためのデザイン研究
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16K00709
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
曽我部 春香 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (50437745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 美貴 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (00635047)
森田 昌嗣 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (20243975)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 河川 / 危険水位 / 防災情報 / 情報周知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、はん濫危険水位表示の存在とその情報を一般の人々に周知するため、わかりやすいはん濫危険水位表示と情報普及方法を検討し具体化することを目的とする。 近年の豪雨災害の頻発は河川を取り巻く防災情報の提供に大きな変化を起こしている。本年度は、これらの状況変化に伴う情報提供変化の調査を継続しつつ、平成29年度に実施した管理者へのヒアリングや各地域レベルでの河川防災に関わる取組例の分析を行った。分析から、管理者が異なることで発信する情報や方法、情報の見せ方に違いがあること、河川の特性により対応に差異があること、地域の人々と河川の関係には分類があることを示すことができた。一級河川は、国が直轄管理を行っているが、二級河川以下は都道府県や市区町村等に管理されている。一級河川は過去の災害歴からも地域に非常に甚大な被害を与えるケースが多い。ただ、従来から地域においてその規模の大きさや流域の広さから、人々の生活や地域の産業などへ大きな影響を与えてきたことから、流域の人々の暮らしに河川が浸透しているケースが多く、流域住民の河川に対する意識や関心は比較的高いといえる。それらは、河川を中心に日常的に活動する地域住民で構成される団体が複数存在していることや、河川に関わる整備や防災等の住民協議が活発に行われることに表れている。一方で、二級河川以下については、流域も小さいものが多く、大小さまざまな特性を持った河川が無数にあることから、管理が非常に煩雑であると同時に河川に対する流域住民の意識も比較的希薄なケースが多く、一級河川のような昔から受け継がれてきた暮らしへの河川の浸透が見られるケースは比較的少ないといえた。以上のことから、意識の異なる人々に様々な手段で情報提供を行っても共通理解を得ることは難しいと言える一方で、情報の見せ方を工夫することで河川情報発信を意識づけることはできることを整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
進捗については、遅れている状況だといえる。したがって、延長申請を行った。 平成29年度に発生した九州北部豪雨の影響によりフィールドでの調査を中断していることや、近年の豪雨による河川災害が頻発する状況から、河川情報の提供の在り方が大きく変化していることに影響を受け、研究の進捗が遅れている。予測の難しい豪雨災害の頻発から河川情報は、危険水位表示による情報提供のみでなく、事前に浸水想定区域やその水深、浸水継続時間などのこれまで一般の人々があまり入手できなかった情報を、順次各河川事務所のホームページなどで公開するといった情報開示が広がっている。これにより河川防災における情報量が増大していると同時に、それらの情報ひとつひとつがどのような意味を持つのかが一般の人々にはわかりにくいまま情報開示されているため、これらの整理を行う必要がある。多量の複雑な情報をすべて同じ重みとして提供しても、人々に伝わるとは言い難く、一定のルールをもって情報の優先順位を決定し提供すべきであるものの、その一定のルールをどうすべきかの検討に時間を要している。また都道府県等の管理する河川防災情報は、地震や台風等の河川以外の自然災害を含む防災情報として提供が行われているため、河川情報を意識的に探す必要がある。調査から重要であることを認識はしていても人々が積極的にこれらの情報に意識的にアクセスすることは期待できず、管理者ごとに異なる情報発信の在り方を一般の人々ができる限り違和感なく受信できる方法の検討をする必要があると言え、その検討に時間を要している。以上のことから当初計画よりも進捗が遅れていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、変化する河川情報の提供について情報収集を行いつつ、提供されている情報の優先順位を決定すべく、日常的に必要な情報と有事の際に必要な情報を整理する。また、さまざまな媒体を用い、多様な情報が、いろいろな見せ方で提供されていることがわかりにくさを増幅させている要因であるため、これらを解消する情報の優先順位選定のルール作成、管理者や媒体が異なる際にも河川情報だとわかる情報見せ方ルールの作成を行う等河川に対する人々の意識が多様であることに対応できる河川情報発信のためのブランディングを行う。
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Causes of Carryover |
フィールド調査の中断により未執行が発生している。また近隣の河川事務所や河川管理者からヒアリング調査や事例情報の提供などの積極的な協力を受けることができたため旅費の計上が少額となっている。また、研究の進捗の遅れから学会等での発表も行えていないことからこれらにかかる経費も未執行のままとなっている。 以上の理由から未執行が発生しており予定していた計画よりも少額の執行となった。 平成31年度は、これまでに収集した資料やデータ整理のための人件費の発生や、今後の方策にある具体的なデザイン提案を行うための資材や準備のための費用が発生する予定である。さらに研究でまとめた情報を積極的に学会等で発表するため、それらにかかる費用が発生する予定である。
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