2016 Fiscal Year Research-status Report
公共の場における人と街と文化をつなぐ空間メディアシステムの開発
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16K00723
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
出原 立子 金沢工業大学, 情報フロンティア学部, 教授 (00299132)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メディアデザイン / デザイン学 / 芸術工学 / インタラクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は人と人、人と街、人と文化とのつながりを創る空間メディアの開発を目指し、インタラクションによる人と場の関係性に着目したデザイン手法を構築し、金沢など地方都市をモデルにして人々に地域文化の魅力を表現・発信する空間メディアシステムを開発し実証実験を行った。 今年度は、大勢の人が集まる金沢駅前広場において、その場の人々のアクションに応じたインタラクティヴな映像を生成し広場にある大型構造物に投影するメディアシステムを制作し、人々の行動データを画像処理技術を用いて取得して分析を行った。具体的には、広場に集まった大勢の人達が一体となって映像を生成する仕組みとして、マイクとスマートフォンのフラッシュライトを活用し、人々の動作に応じて大型構造物に投影される映像が変化するメディアシステムを開発し、2日間、19時~21時の夜間において金沢駅にて実施されたプロジェクションマッピングの会場において実証実験を行った。インタラクティヴな映像を生成するために、カメラを通して広場全体を撮影し画像処理によってフラッシュライトの明暗の差による映像制御や、人々の全体的な動きのベクトルを抽出しそれに合わせた映像を生成、さらにマイクを用いて人々の手を叩く音に応じた映像を生成する3つの手法を用いて定点観測による実験を行った。参加状況を分析するために、画像処理によるフラッシュライトの光量の変化量、および動きのベクトル、さらに音の変化量をグラフ化し、それぞれのインタラクティヴィティの効果を定量的に検証した。 さらに、今年度は別の実験として地域の水族館内において来場者と展示物とのつながりを強化し、館内でのアクティヴィティを活性化するラリー型のメディアシステムも開発し、実証実験を行った。さらに、街中回遊性向上を目指したスマートフォンのGPSと街中大型ヴィジョンを連動させたメディアシステムも開発し、実証実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度は、3種類のメディアシステムを開発し、それぞれについて公共の場所において開発したメディアシステムを用いた実証実験を行うことができた。 一つ目は、駅広場の大勢の人々が集まる場所において、人と大型構造物に投影する映像とのインタラクションについて分析するために、その仕掛けとなるメディアシステムを開発し定点観測型のデータを抽出する実証実験を行った。 二つ目は、地域の水族館内において来場者と地域の海洋生物に関するデジタル展示装置とのつながりを強化し、館内でのアクティヴィティを活性化するスマートフォンアプリケーションを用いたラリー型のメディアシステムも開発し実証実験を行った。来場者らのスマートフォンを水族館展示物や展示情報とのつながりを創るメディアとしてとらえ、スマートフォンを活用したインタラクティヴな演出をつくり水族館内における観覧する楽しさを創出し、退館後も水族館とのつながりをつくり、且つ学びも提供するコンテンツによって継続的につながりを作る試みを行った。今後、本システムの検証を行うために、水族館内のラリー参加者らの行動履歴データを取得することができた。 三つ目は、観光客・市民らの中心市街地の回遊性を向上することをねらいとして、金沢駅から金沢中心市街地に向けてつながりを創るメディアシステムを、スマートフォンと中心広場における映像投影システムを連動させて開発し実証実験を行った。スマートフォンのGPS機能を用いたアプリケーションを用いて、駅から中心市街地の各拠点を巡るストーリー性のある体験をつくり、最終的に中心広場の大型ヴィジョンを目指す回遊性創出を試みた。実証実験の結果、スマートフォンのみを使用したメディアシステムではなく、人々の目に触れる大型ヴィジョンを活用したインタラクティヴな演出を加えることによって、人々への訴求効果が高まることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、人と街、文化をつなぐメディアを多角的にとらえて、様々なシーンにおけるインタラクションを創出するメディアシステムを開発し実証実験を行った。これらの成果を踏まえて、今後は人と街、文化をつなぐより効果的なメディアシステムを開発するための要件などを抽出し、さらにシステムの改善し検証を続けていきたい。 具体的には、公共の場所として駅広場における今年度の実証実験の結果、大勢の人々とのインタラクションを創出するために効果的であったマイクから取得した音情報処理や、カメラから取得した画像処理による技術を用いたメディアシステムを開発し、人々との行動データを取得し分析を深めていきたい。 またに、水族館向けに開発したラリー型のメディアシステムを用いた実証実験の結果得られた、参加者らの行動履歴データの分析を今後行っていきたい。さらに、本ラリー型メディアシステムを用いた実証実験を継続的に実施し、公共の社会教育施設における効果的なメディアシステムをデザインするための指針となる要件を抽出していきたい。 また、これまでの実証実験の成果をまとめ、学協会等で発表を行うことも予定している。
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Causes of Carryover |
今年度のメディアシステムの開発、および実証実験の実施に関して、全て研究室内メンバーの協力により遂行できたことにより、予定していた人件費等が抑えられたため。予定していた物品費についても節約することにより、計画よりも抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度節約できた予算を次年度に繰り越し、次年度の新たなメディアシステムの開発経費、および実証実験に必要な機材費、実施運営に必要となる経費に使用したい。
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