2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K00725
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Research Institution | Seian University of Art and Design |
Principal Investigator |
大草 真弓 成安造形大学, 芸術学部, 教授 (00513574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 亮 成安造形大学, 芸術学部, 准教授 (80645945)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | デザイン / 参加型デザイン / ワークショップ / 医療連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ステークホルダーと共に社会課題に挑戦する共創的なデザイン力を持った学生を育てるとともに、医療連携授業を「コトのデザインを学ぶ活動」としてモデル化することを目指している。 28年度は、(1)吸入療法の治療プロセスを映像制作とCJMによって可視化したが、COPDや喘息の医薬連携の仕組みは先進的な形で既に整備されていた。(2)これを受け、吸入器の使用ミスによって効果が現れにくい患者や治療が継続できない患者の潜在ニーズを「患者さんの悲しみを探る」という形でワークショップとして実施した。(3)3タイプのデザイン案を試作したが、現場で試用できるレベルのプロトタイプを制作することはできなかった。(4)医療とデザインの連携については十分な手応えがあったが知識量等の面から治療現場を外化する形のワークショップは難しいこともわかった。 29年度は、複数の仮設ペルソナと演劇的手法を用いた診療観察と記述方法について考察した。 (1)治療が難しいタイプの喘息患者の仮説ペルソナを作成する。(2)各自が設定した仮説ペルソナ(初診の喘息患者)になりきったつもりで一連の模擬受診を行う。(3)発見した課題をもとに解決策をデザインしてプロトタイプを作成する。(4)プロトタイプを基にそれを評価・ブラッシュアップするワークショップを医師を交えて行う。 このプロセスは、医療にあまり縁のない学生が医療課題を自分ごととして捉えてデザインを進める際に、強いモチベーションを持続させることがわかった。ただし、模擬診療のタイムラインを長くとるとアイデアが拡散してしまい、各課題に対して吸収すべき知識が異なるために提案がなかなか深まらないデメリットもあることもわかった。 30年度は、課題の焦点を最初からある程度絞った上で、プロトタイプを制作した後で医療従事者・患者を交えたワークショップを検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)FAXによる医薬連携の仕組を実際に使用している医師・薬剤師へのインタビューは実施しなかった。 (2)オブザベーションによる直接的な課題発見からスタートすると課題自体が拡散し、医療連携に必要な学習量が授業時間を超えてしまうため、進捗が極端に遅くなってしまい、制作したものを実際に患者を交えて使用して改善を図るという次のステップにつなげることができなかった。 (3)ワークショップの結果から得られた課題に基づいた提案ツールのデザイン案制作に十分な時間がとれなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)仮説ペルソナになりきって模擬受診を行うことは、医療課題が自分ごとになるきっかけとなり、モチベーション維持に役立つことがわかったのでこれは取り入れる。 (2)課題自体の発見から自分たちでやろうとすることは、デザインを学ぶ学生にとってはとても大きな学びになる反面、現場の医療ニーズに応えうるだけの深掘りは時間的に難しく、やはり少し無理があった。課題そのものは医師との事前打ち合わせで予め焦点を定めて提示する方法に変更する。ただし、「モノ」のデザインに終わらせず「コト」のデザインとして考えさせるため、タイムラインを短めにとった模擬受診を行う。具体的には、下記の2つの課題にトライする。 ◎2回目の来院を促す方法:表面的な症状が収まっただけで根本的な原因である炎症が収まる前に通院しなくなる患者をどうすれば継続通院させることができるか? ◎喘息の治療方法の説明図:徹底してわかりやすい美しいものにする(医師が説明しながら追記できるシートタイプ・配布して読んでもらうパンフレットタイプ) (3)医療従事者・患者を交えたワークショップについては、プロトタイプの評価とブラッシュアップアイデアを考えるものとする。 (4)デザインと医療が共創するPBLタイプのカリキュラムを継続的に行うために、ワークショップを介在させる手法について一定のモデル化を行いたい。
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Causes of Carryover |
(理由) (1)昨年度の成果物のまとめを冊子の形に編集する作業が遅れており、現在進行中である。(2)旅費・交通費:発表を予定していたフォーラムへの参加を見送ったために予算より少なくなった。(3)人件費・謝金:当初行う予定のなかった30年度にもワークショップを実施するため、参加者への謝金が必要。 (使用計画) (1)昨年度の成果物のまとめを24ページの冊子の形に編集し、印刷物とする。今年度の成果物についても冊子に編集予定。(2)旅費・交通費:打合せ、学会への参加回数が増加予定。(3)人件費・謝金:当初は30年度はワークショップを実施しない予定であったが、実施する。ワークショップ参加者には患者も含めるので、謝金は当初予算額より増額する。(4)その他:プロトタイプ制作費は増加する見込みである。
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