2017 Fiscal Year Research-status Report
保育・教育における省察力と課題解決力の育成のためのAIアプローチの検討
Project/Area Number |
16K00740
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
音山 若穂 群馬大学, 大学院教育学研究科, 教授 (40331300)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古屋 健 立正大学, 心理学部, 教授 (20173552)
懸川 武史 群馬大学, 大学院教育学研究科, 教授 (20511512)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Appreciative Inquiry / 対話的アプローチ / 保育実習指導 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、対話を中心とする組織変革理論であるAppreciative Inquiry(AI: Whitney & Trosten-Bloom,2002,2010)をアプローチとして、保育・教育職として必要な省察力・問題解決力の育成に最適化した資質向上プログラムを構築することを目的とした。本年度の主な成果を以下に示す。 1)グループワーク志向性が課題解決型学習に及ぼす影響について、保育者養成課程学生を対象として授業を通した実践を行ない、グループワーク志向性尺度(向後ら,2010)および学習後の自己評価項目により検討を行なった。その結果、グループワーク志向性の下位尺度である「スキル」「意義」「達成感」がそれぞれ個人の自己評価に正の影響を及ぼしていること、「意義」がグループ活動の評価に正の影響を及ぼしていることが示された。グループワーク志向性が高い群では、「自身の実習を振り返ることができた」「実習についての考え方が変化した」「個別学習をもとに話し合いができた」「グループで計画的な活動ができた」など、自らの省察や協同学習への意欲への意識が高いことが示された。 2)音山ら(2014)によるAIミニ・インタビューの試案を実習事後指導において実践し、その前後で保育者省察尺度、自己評価尺度、及び授業の感想を測定し、効果を検証した。AI実施後は「保育者として」の意識や、子どもへの関心が高くなり、「話をすること」「話を聞くことができた」「視野が広がり、保育観を学ぶことができた」など自己評価でも効果が示唆された。 3)対話型アプローチにおける展望的視点を促すプログラムについて、三浦ら(2017)をもとに、子どもの1年間の時間の流れをシミュレーションさせる活動を行ない、その後にAIミニ・インタビューを行なうプログラム試案を作成し、保育者養成課程学生を対象に実践を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度では、AIによる省察力・課題解決力育成プログラムの実践と、省察力・課題解決力の評価指標の作成の2点を当初計画した。このうち、AIによる省察力・課題解決力育成プログラムについては、音山ら(2014)によるAIミニ・インタビューの授業実践を進め、プログラムの最適化を進めることができた。また、保育・教育においては自らの体験の振り返りだけでなく、振り返りをふまえて、時間軸に沿った展望的な考えを持つことも求められることから、三浦ら(2017)をもとに対話型アプローチによる展望的視点を促すプログラムの試案を作成した。評価指標の作成については、「保育者省察尺度」のほか、グループワーク志向性尺度や、授業後の自己評価の項目によりデータを収集している。昨年度からデータの蓄積を進めてはいるものの、現時点では信頼性・妥当性の検証を得るまでには至っておらず、この点は今後の課題といえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成30年度では、省察力・課題解決力の評価指標の作成と、プログラムの実践と持続可能性の検討を行なうことを予定している。このうち、評価指標の作成については、これまでの実践において事前事後比較した結果から、「保育者省察尺度」の反応が比較的良好であることから、この尺度についてさらにデータを追加し、信頼性・妥当性の検証を行なう計画である。特にこの尺度は保育者一般向けの内容であり、養成課程学生向けの項目がないことから、これまで収集している自己評価項目をもとに、かかる項目の検討・追加も行なうことが期待される。また、インタビューでは、生成されるストーリーが主要なデータとなることから、ストーリーのテキストを内容分析し、positive change仮説が支持されるかの検証も行なう予定である。プログラムの実践と持続可能性の検討においては、引き続き養成課程での授業実践を進めることに加えて、園内・校内研修においても介入研究を行ない、養成と現場とに共通して使用可能な形にするとともに、AIが示す変革モデルである「4Dプロセス」を踏まえ、年間を通した実践が可能なプログラムを立案する予定である。
|
Causes of Carryover |
(理由)データ解析作業のための物品費と、人件費・謝金については、データ収集が継続中であり、まだ解析準備が整っていないことから支出しなかった。 (使用計画)30年度中の諸実践のデータが揃ったところで、支出する計画である。
|