2018 Fiscal Year Research-status Report
親の社会経済的環境からみた幼児の生活習慣の「乱れ」に関する質的研究
Project/Area Number |
16K00747
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
冬木 春子 静岡大学, 教育学部, 教授 (60321048)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 幼児 / 生活習慣 / 親 / 就労 / 社会経済的要因 / 保育実践 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は親の社会経済的環境によって幼児の生活習慣がどのような影響を受けているのかを明らかにすることである。本年度に実施した研究は次の二つに分けられる。 第一に、母親の就労が幼児の生活習慣に及ぼす影響についてのインタビュー調査を一昨年度に続き行った。乳幼児を育てている母親10名(有職の母親7名、無職の母親3名)に実施した。調査では、質問紙調査から得られた知見である「母親の就労によって幼児の睡眠習慣および食習慣は影響を受けるのか」について検証を試みた。データの詳細な分析は次年度に行うが、特筆すべき知見としては、子どもの食習慣は母親の中食利用への積極性や健康に対する意識にも大きく左右されると考えられる。幼児期は食習慣が形成される重要な時期ではあるが、それよりも子どもの習い事への投資や能力開発に重きを置くケースもあり、近代的な育児スタイルの一つと捉えられた。その一方、間食習慣については「手作り」志向が強く、子どもと共に楽しみたいという意識や、母親として手間暇かけることへの憧れが背後にあると考えられた。今後インタビューデータを分析し、幼児の生活習慣は母親の就労スタイルという社会経済的環境によってどう影響されているのか、それ以外の規定要因についてもまとめていくつもりである。 第二に子どもの生活習慣の中でも食習慣の改善に焦点を当て、保育所において食に対する興味や関心を広げ、共食の楽しさを味わうための保育の実践を行った。保育実践では幼児がお月見行事についての認識を段階的に深めながら「お月見団子作り」を行うプログラムを開発し、食習慣の改善へと資する食育の実践を行った。そこから見える子どもの育ちについても考察した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度も当初の予定通り研究を進めることができた。特に、昨年度から行っているインタビュー調査において、多様な就労スタイルで働く母親からの質的データを集めることができた。全体として16ケースになり、母親の就労スタイルや家族形態という観点から多様性を描き、類型を把握することができると考えられる。また、本研究が目指す具体的取組の一つである幼児の食習慣の改善に向けての保育実践を行い、子どもの発達に貢献できることが確認できた。以上から、当初の予定通りに研究は進んでおり、概ね研究は順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は母親の社会経済的環境による子どもの生活習慣(睡眠習慣、食習慣、間食習慣)への影響について、収集した質的データを分析し、母親として手間暇かけることへの憧れなどの意識や食や健康に対する志向性とその変化、親の就労スタイル(就労の有無や職種、帰宅時間)などの社会経済的環境が子どもの生活習慣にどう関連し、影響しているのかを分析していく。そこから親の就労含めたライフスタイルの多様性と子どもの生活習慣との関連について、これまでの量的調査と合わせてまとめていくつもりである。最終的には、幼児の生活習慣の乱れを改善する保育や家庭科教育のあり方への提言、さらには地域社会での取り組みへとつなげるよう実践的志向性を有する研究へと展開していくつもりである。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、今年度に想定していた学会誌への投稿料等の支払いが査読審査の遅れにより後ろ倒しになったためである。現在、投稿論文の査読が終了し、論文は印刷中であることから、確実に次年度使用額として計上するつもりである。
|