2017 Fiscal Year Research-status Report
家族並行介護支援プログラムにおける相互支援システムの構築に関する研究
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16K00758
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
篠田 美紀 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (10285299)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 認知症高齢者 / 家族介護 / グループ回想法 / 相互支援ネットワーク / 家族並行介護支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は認知症高齢者とその介護家族が地域において自主的にネットワークを形成し、そのネットワークを維持しながら相互支援を行うための創造の中心となる人材育成を目的とするものである。H16年度より実施してきた認知症高齢者とその家族を対象とした長期的な臨床心理学的援助は医療機関内で大学主導型研究モデルの実践であった。よって、本研究ではこれまで実践されてきた家族並行介護支援プログラムを介護家族が主導となって運営できる自主型のネットワーク維持システムへと移行することを目的としている。 H29年度は、前年度と同様に認知症高齢者本人のグループ回想法と家族会を並行して実施する家族並行介護支援プログラム3期、フォローアップの会を2回実施した。3か月間の認知症高齢者本人によるグループ回想法を5月~7月、10月~12月、1月~3月の3グループ(のべ回数30回)実施し、のべ9家族の参加を得た。しかしながら、今年度は就労や体調不良、来談意欲の消失のため、介護家族の同伴来所が困難な事例が相次ぎ、認知症高齢者単独での来所も不可能であったため、中断事例が多く見られ、来所形式でのネットワーク形成の課題が浮き彫りとなった。 また、フォローアップの会も5月、12月の2回実施し、認知症高齢者本人とその介護家族のべ、30組が参加した。現況報告および介護負担感の共有、介護保険利用などについて情報交換を行ったが、重症化する認知症症状の介護負担が多く語られた。介護家族にとっては現在の大学主導型の来所形式をそのまま移行して自主運営するよりも、新たな情報共有の方向性を探る必要のあることが明らかとなった
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度実施できなかった医療機関外での地域施設での実施を検討したが、現状通りの医療機関内での家族並行介護支援プログラム実施の要望が強く、本年も実施場所を移行しての取り組みは実現できなかった。原因としては、認知症高齢者本人がなじみの場所以外の場所に適応する負担の大きさや、移動経路の変化に不安のあること、認知症症状の重症化、介護家族の高齢化、就労や体調不良などの介護家族の介護状況の深刻化がある。 しかしながら、家族並行介護支援プログラムの継続への要望は強く、参加率も高いため、介護家族、および認知症高齢者本人が本プログラムに参加し、ネットワークを構築し続けるための場の提供をこれまで通り医療機関内で続けている。 家族と認知症高齢者本人を並行して支援するという、家族並行介護支援プログラムは、認知症高齢者本人のみならず、家族支援にも同時に重きを置いたプログラムであったが、本年度のプログラム参加者は就労や体調不良、通所の負担感から、中断事例が多く認められた。スタッフによるプログラム運営スキルの向上や、来談を継続するサポートが必要であるとともに、ネットワーク構築の方法を再検討する必要が生じていると判断された。
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Strategy for Future Research Activity |
家族並行介護支援プログラムの実施については、中断事例も見られるが、継続参加者にとっては、希望が強く、医療機関内実施の従来形式では順調に進行している。しかしながら、当初の予定であった医療機関外での開催場所の移行については、安全確保や介護家族者の負担を鑑み、再検討する方針である。家族相互のネットワーク形成には、情報交換と介護負担の共有の場が重要であるため、これまで通りの来所形式を踏まえつつ、情報共有と介護負担感の共有を目的とした集約を行うことにする。具体的には、これまでの家族並行介護支援プログラムから得られた記録より、情報の集約と新たなネットワークに向けての発信方法を検討する。
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Causes of Carryover |
理由)予定していた地域施設での開催が今年度も実行困難で、会場費、準備費、設備費、物品費など、その他の経費に計上できなかった。さらに、予定していた国際学会出張と東京出張が研究実施者の体調不良と大学業務のため実行できず、旅費執行が大幅に減少した。人件費の大幅増加については、グループ回想法実施のためのスタッフ不足により、記録担当者を増員する必要があり、対応したためである。 使用計画)円滑な家族並行介護支援プログラムの実施を目指すため、運営スタッフの獲得とともに、運営技術の向上を目指し、専門的技術の向上のための研修教育の機会を増やす。さらに、本年度実施できなかった地域回想実践で先例のある名古屋地区への訪問研修を増やす。さらには、次年度研究集約のため、2年間蓄積してきたデータの集約作業に計上する予定である。
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