2016 Fiscal Year Research-status Report
農村女性のキャリア形成にみる世代変化-直系制家族50年の反復調査より-
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16K00762
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Research Institution | Jumonji University |
Principal Investigator |
大友 由紀子 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 教授 (00286121)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 家族変動 / 長期反復調査 / 世代変化 / 農村女性 / キャリア形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
農村女性起業の活発化もあり女性農業者のモデルケースが紹介される機会が増えている。しかし現実には、若い女性の農業離れは進行している。モデル的な女性農業者は農家女性一般を代表しうるのだろうか。農家女性のキャリア形成にみる世代変化から、女性農業者としてのキャリア形成の道を考察したい。 ぶどう郷として名高い甲州市勝沼町において同一の直系制家族100余を対象に1966年から1997年の31年間6回にわたって実施された「勝沼調査」の50年後7回目の反復調査を実施することで、農家女性一般のキャリア形成にみる世代変化を直接観察できる。住民基本台帳(2017年1月1日現在)から、1997年第6回調査の対象106世帯のうち90世帯の存続を確認できた。対象世帯は1966年当時、親世代夫婦と子世代夫婦が同居する完全直系家族だったが、子世代の夫32名(1922-1935年生)・妻52名(1921-1942年生)、孫世代の夫56名(1948-1969年生)・妻52名(1947-1978年生)、曾孫世代の夫5名(1976-1982年生)・妻5名(1972-1990年生)を確認できた。所在不明の16世帯は、聞取りにより8世帯の存続は確認できた。子世代夫婦揃い3世帯、孫世代夫婦揃い2世帯、計5世帯に予備調査を実施したところ、農業の担い手の長寿化が顕著で、孫世代妻は農業非従事でも、農産物の加工販売には関わる事例がみられた。 甲州市産業振興課との共催で、対象世帯の代表はじめ女性農業者や研修生受入れ農家による座談会を開催したところ、Iターンによる新規就農、定年帰農とならび、女性後継者が後継者対策として語られた。しかし、男子優先の継承を伝統とする家族農業において女性の経営参画を可能にするには、女性を対象とした農業教育・訓練が必要である。欧州南部ドイツ語圏の先進事例について世界農村社会学会で報告し、論文にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.「家族変動・勝沼調査」過去6回の調査票の整理保存作業について、1992年第5回調査、1992年S・SW結婚調査、1997年第6回調査の個票をスキャニングし、デジタル保存することができた。これらの個票はワープロで作成されており、スキャニング作業も順調に進んだ。それ以前の1966年第1回から1986年第4回までの個票はガリ版印刷や青焼きのため、次年度以降は接写作業が必要になる。 2.第14回世界農村社会学会トロント大会(8月10日~14日)にて、男子優先の継承を伝統とする家族農業において、女性の経営参画を可能にする職業教育・訓練の国際比較についての研究成果を発表した(タイトル:Promotig female farm management beyond patriarchal family farm tradition)。 3.「家族変動・勝沼調査」第7回調査にむけた予備調査として、甲州市役所市民課にて住民基本台帳を閲覧し、前回1997年第6回調査の対象世帯106のうち90世帯の存続を確認するとともに、聞取りによってさらに8世帯の存続を確認することができた。 4.山梨県内の農村女性起業家を対象としたフォーカス・グループインタビューを予定していたが、甲州市産業振興課との共催により、勝沼調査対象世帯の代表はじめ女性農業者や研修生受入れ農家を対象とした座談会「ぶどうとワインのふるさと・果樹農家の持続と発展を語る会」として、グループインタビューを実施した。 5.「家族変動・勝沼調査」の対象世帯は、初回調査から50年が経過してライフステージが多様化していることから、第7回調査では構造化面接調査よりもインタビューガイドを使った半構造化面接が有効とわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.「家族変動・勝沼調査」第7回調査(4月から9月)。1997年第6回調査の対象106世帯のうち98世帯が存続している。第1回調査時点では完全直系家族だったが50年が経過してライフステージは多様化したため、これまでの構造化面接ではなく、インタビューガイドを使った半構造化調査を実施。 2.「家族変動・勝沼調査」1966年第1回調査から1986年第4回調査までの個票のデジタル保存作業(4月から1月)。 3.勝沼町における女性農業者リーダーのキャリア調査(10月から3月)。2005年の甲州市合併によって男女共同参画推進はどう変化したか政策担当者へのヒアリングを実施し、次いで、女性農業者リーダーへのインタビューによってキャリア形成パターンを確認する。 4.日本の女性農業者リーダーについて、農村女性政策の歴史と農村女性リーダーの統計をまとめ、女性農業者リーダーのキャリア形成の事例を紹介する英文図書を執筆(4月から1月)。Tomozumi Nakamura, Y., et al. (eds.) Japanese Women in Leadership, Palgrave Macmillan(Chapter 13: Agriculture)の執筆が決定している。 5.第27回ヨーロッパ農村社会学会(7月24日~27日於:ポーランド・クラクフ市)で、女性農業者を対象にした職業教育・訓練について、欧州南部ドイツ語圏の女性農業者のライフコース分析から報告する(タイトル:Vocational Education and Training for Female Farmers to Change Gender-oriented Family Farm Tradition: A case study in the southern parts of German-speaking Europe)。
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Research Products
(3 results)