2016 Fiscal Year Research-status Report
生活素材の白斑の発生メカニズムの解明と白斑発生を予測する評価方法の構築
Project/Area Number |
16K00766
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
前田 憲寿 東京工科大学, 応用生物学部, 教授 (50454137)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 白斑 / 経皮吸収 / 毒性 / チロシナーゼ / 4位置換フェノール / ヒドロキシラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生活素材による白斑の発生を予測するin vitro評価方法を構築することである。具体的には、過去に白斑を発生させたフェノール化合物について共通のメラノサイト特異的毒性発現メカニズムを解明し、毒性発現メカニズム、毒性発現濃度および経皮吸収率から、白斑を発生する危険性について予測するin vitro評価方法を構築することである。薬用スキンケア化粧品のほとんどに美白を訴求する有効成分が配合され、成人女性が使用量・使用頻度を制限することなく、それらを日常自由に使用するものであるため、白斑という副作用は決して発生させてはならない。本研究の成果としては、生活素材が白斑を発生する危険性のないことを裏付ける評価方法のひとつとして利用できることを提案する。 生活素材は安全性が高いことが必要である。本研究では、メラニン生成抑制機序を有する美白有効成分について、皮膚内推定濃度と培養細胞系での細胞毒性濃度・メラニン生成抑制濃度を算出するとともに、in vitroで色素細胞毒性・有効性を予測した。皮膚内推定濃度は、オクタノール/水分配係数を算出して皮膚透過係数予測式から皮膚透過係数を求め皮膚内濃度を推定する方法と、拡散セルを用いて皮膚内濃度を測定する方法の2種類を用いて算出した。また、細胞毒性濃度・メラニン生成抑制濃度はB16メラノーマ細胞を用いて算出した。さらに、チロシナーゼによって有効成分から生成されるヒドロキシラジカルについて相対強度-濃度曲線を作成した。その結果、皮膚内推定濃度で細胞毒性がなく、メラニン生成抑制効果を示すことに加えて、ヒドロキシラジカルを生成しないことも白斑を引き起こさない生活素材の必要条件になると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
評価技術を持っていたため、計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
チロシナーゼによって白斑を引き起こす化学物質の構造には特徴があり、特にベンゼン環の1位が水酸化され、4位に非極性の側鎖がついたアルキル基等をもつ4位置換フェノールが白斑を引き起こす場合が多く、これらは、ヒドロキシラジカルを発生するものが多い。また、ハイドロキノンの配糖体やレゾルシノール構造にはヒドロキシラジカル発生作用は認められない。透過型電子顕微鏡による細胞形態の観察を行い、4位置換フェノールの色素細胞に対する細胞毒性の特徴として、細胞にとって有害な化学物質の蓄積によって起こる損傷である空胞変性が多数見られるかどうかを検討する。また、4位置換フェノールのメラノサイト特異的毒性はチロシナーゼの触媒作用によって生じたortho-キノンやortho-キノンメチドによって引き起こされることが報告されているが、より低濃度でチロシナーゼによってヒドロキシラジカルが発生するので、それが毒性の本体であると考えられる。色素細胞内でのヒドロキシラジカルの産生部位の測定を行い、ヒドロキシラジカル発生部位がメラノソームと一致しているかどうかを検討して、毒性の強いヒドロキシラジカルがチロシナーゼの存在するメラノソームで多量に発生していることを明らかにする。さらに、Stage IVのメラノソームのすべてからヒドロキシラジカルが発生しているとはかぎらないと予想されることから、メラノソームにおけるヒドロキシラジカルの発生・消去のメカニズムについて検討する。
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Causes of Carryover |
学会参加費として使用予定だったが、支払いが遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度に学会参加費として使用する予定である。
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