2016 Fiscal Year Research-status Report
後期高齢者の「低栄養」を予防するための「食と心理的支援」の研究
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16K00768
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
加藤 佐千子 京都ノートルダム女子大学, 生活福祉文化学部, 教授 (80233790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 久雄 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (60150877)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低栄養 / 後期高齢者 / 独居 / 心理的支援 / 半構造化面接 / 食習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
後期高齢者の低栄養はフレイルの原因となることが指摘されている.特に女性高齢者の場合,夫との死別が孤独感をもたらし,食事づくりの意味や役割感の喪失,食欲の減退等が指摘されている.さらに孤食となる場合も多く,人との関わりや食べる楽しみの低下も生じる.このような状況は低栄養に繋がる原因であり心理的な問題が関連している.栄養面への助言のみならず支援者は高齢者の心を理解しながら低栄養予防や自立を支援していく必要がある.そこで本研究は,研究期間(28~30年度)中に,女性高齢者の自身の食生活に対する認識や心理的状況を把握し,食行動変化のプロセスを明らかとする.予期していない食に関わる心理的状況を把握することは,低栄養防止に向けた心理的支援の方策を考案する上で重要である. 28年度は,研究倫理について承認を受けた.次に高齢者団体や生涯学習講座実施団体に協力を呼びかけるとともに,機縁法によって協力者を募った.合計13名(女性・80歳~90歳独居)の協力者に同意を得て,半構造化面接,食習慣,身体状況,生活習慣,属性等の調査を2016年8月~2017年1月に実施した.逐語録の分析は現在進行中である.現時点で以下のことが明らかとなった.13名全員が自立し,自分で食事の準備をしていた.摂取エネルギー量1000kcal未満が2名,2600kcal以上が4名した.BMI値,握力値,下腿周径低値の者はエネルギー摂取量も低かった.1名については逐語録の分析が終了し,食行動やその変化についての認識を分類した結果,『栄養バランスを保つことへの正論・困難感・諦め・工夫の混在』『調理への意欲・困難感と過去の調理行動への自負』『食品購入の楽しみと困難感』『外食の正当化』『配膳のこだわり』『家族への貢献』『幼少期の回顧と解釈』『食習慣形成の理由』の8カテゴリーにまとめられた.今後は引き続き逐語録の分析を行う.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画は,(1)6月頃までに研究分担者と協力して調査内容を決定する.(2)研究計画書を研究倫理審査委員会へ提出し承諾を得る. (4)食習慣調査票使用許可の手続きを行う.(5)協力者募集のチラシ作成し配布する.また,具体的な説明を行う.(6)協力者(3-5名)を決定し,調査・面接を行う.(7)インタビューデータを逐語録とする.逐語録から食に関する会話を抽出し,意味のまとまりごとに会話を区切り,グルーピング後,カテゴリー化,概念化し,定性的に整理する.(8)研究分担者,専門家の意見を聞きながら,分析の妥当性を確保する.という内容を組み込んでいた. (1)~(6)については「実行できた」.すなわち,2016年5月に研究計画書を研究倫理審査委員会へ提出し,7月に承認を得た.(承認番号16-013,承認日2016年7月20日).(株)メディカルリサーチと業務委託契約を交わし,調査票の使用,分析の委託について契約した.協力者募集チラシを作成し,生涯学習センターに設置し,講演会を利用して説明を行った.さらに,希望者には電話や直接会って説明を行った.高齢者団体にチラシを送付した.また,機縁法でチラシを配布した.13名から協力の同意を得て,調査や面接を実施した. (7)については,13名分の会話を逐語録とし,5名分のデータについては会話を区切る作業が終了した.会話内容のグルーピング,カテゴリー化については,1名について終了した.残りの12名については今後行う. (8)については逐語録の分析が終了した時点で、行っていきたい. 以上,計画に沿って概ね予定通り進行した.計画時よりも,協力者の数が多かったため,28年度中に逐語録からの会話抽出を終えることができなかったが,予定よりも多めのデータを収集できたことは望ましい結果ととらえ,今後積極的に分析を進めていく.
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Strategy for Future Research Activity |
28年度に引き続き,逐語録の分析を行う.この分析では,食事摂取や食環境,これまでの食行動の変化をどのように認知しているかを抽出する.抽出した会話を意味のまとまりことにグルーピングし,カテゴリー化し,概念化していく.加齢に伴う食行動の変化と,心理的変化のプロセスの構造図を作成し,食と関連する心の動きや意味の解釈および,食行動変化のプロセスの把握を行う.また,追加のデータ収集が必要と判断された場合,協力者のリクルートを行い,半構造化面接を実施し分析データを補足する. さらに,29年度は「配食サービス業者」への聴き取りや,「配食現場」視察を行い,食事サービス提供者が食事サービスの際,心理的支援についてどのように認知し,実際にどのように行っているのかを把握する.視察は,国際老年学会参加日程に合わせてアメリカの施設(施設名;気持会[Kimochi Home],場所;サンフランシスコ)でも行う予定である.国内の施設は,「社会福祉法人 ふきのとうの会;東京都」を予定している.これら配食関連業者に対する調査は,配食サービス実施時に食事支援と同時に心理的支援をどのように行っているのかを明らかにすることを目的とする. 結果をまとめ解釈を行う際には,分担者や食の専門家と相談をしながら行っていく.また,学会発表を積極的に行っていく.
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Causes of Carryover |
逐語禄作成のアルバイト確保が当初の予定よりも困難であったため、人件費の支出が少なかった。その分、分析も進まなかった。29年度は3名を確保できたので、逐語録の分析補助の人権費として使用する必要がある。 研究代表者(京都)と分担者(東京都)との研究会を開くにあたり、双方の仕事の関係で夕方に設定していた。この場合、東京で行ったときは研究会後に宿泊する予定で宿泊費を計上した。しかし、大学の経理方針により支出が認められなかったので旅費の支出が少なかった。また、逐語録分析が遅れたため、研究会の回数も少なくなり、経費の使用が抑えられた。29年度は、研究会の回数を増やしていくため、旅費として経費が必要である。 ノートパソコンを持参し、分析についての議論を行う予定にしていたが、逐語録作成の遅れにより、できない見通しがついたので、見通しがついた地点で購入を考えた。このため、29年度初めには購入する必要がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の使用計画として、人件費・謝金、宿泊費、物品費、その他を以下のように計画している. 代表者は、人件費・謝金=88000円(データ整理・分析補助;880円×100時間)、旅費=164000円(東京-京都間交通費と宿泊代として41000円×4回)、物品費=155800円(ノートパソコン1台)、その他=23082円を使用する。分担者は、人件費・謝金=60000円(データ整理・分析補助)、その他=9700円を使用する。
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Research Products
(1 results)