2017 Fiscal Year Research-status Report
後期高齢者の「低栄養」を予防するための「食と心理的支援」の研究
Project/Area Number |
16K00768
|
Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
加藤 佐千子 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 教授 (80233790)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長田 久雄 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (60150877)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 高齢女性 / 独居 / 死別 / 食行動 / 食事サービス / 配食サービス |
Outline of Annual Research Achievements |
「86歳独居女性は自身の食行動をどのように認識しているのか-7年前に夫と死別した女性の場合-」と題して第59回大会日本老年社会科学会でポスター発表(2017年6月)を行った。栄養摂取,調理や買い物に対して一定の正論を持ち,自身の食行動の変化にも気付き,工夫をしている自分を認知しており,諦めや億劫になるのだという心の変化状態も自覚していることが明らかとなった。本研究では、1事例ではあるが、高齢女性の心理的な状況から、食生活上の問題が生じた自身の状態への認知状況を明らかにすることができた。付随する心理的な問題については、【諦め】が生じることがあり、このような状況へのサポートをどうしていくかという問題を発見することができた。 サンフランシスコ及び東京都内の施設における配食サービス、食事サービスの視察と、職員に対する食事サービスについての面接調査を実施した(2017年7月)。第70回日本家政学会で「健康寿命延伸に向けた食支援と配食サービスの課題-食事サービスを行う施設視察をもとに-」と題してポスター発表(2018年5月)を行う。また、学科紀要への投稿も行う。利用者側の課題は疾病、人種の問題、保険加入の有無、経済的問題などであった。食事提供側は、フードバンク等からの食事・食材の提供の有無、配達者の確保、食材の形態への対応、配食可能数、認知症・抑うつ状態・不在者への対応、ボランティアの資質や養成などの課題が明らかとなった。さらに、配食を利用していることが高齢者の栄養状態を補償するものではないということも示唆された。この研究では、心理的支援を配食者が担えるのではないかと当初考えていたが、それを可能とするには、ボランティアの確保や、利用者のリスク発見能力や、コミュニケーション能力等、ボランティアの資質の課題が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度は、6月に日本老年社会科学会において学会発表を計画通りに実施した。29年7月には国内で配食サービスを実施している施設職員に対して聞き取り調査と施設見学を予定通り実施した。この聞き取り調査のテープ起こしも完了した。 海外の施設視察について、研究倫理審査委員会の審査、視察する施設の交渉を7月中旬に終えた。7月末に国際老年学会(於:サンフランシスコ)へ参加して、知見を深めると同時に、サンフランシスコで「オンロック」「心」「プロジェクトオープンハンド」の3施設の視察と見学を行った。また、各施設での食事サービスと配食サービスについての聞き取り調査も計画通りに実施した。加えて「心」ではアクティビティのボランティア活動を行い、利用者と交流を行った。施設視察に関する研究では、学会発表を30年5月に日本家政学会で行う。また、30年5月中旬頃発行の「福祉生活デザイン研究」へ投稿中であり、掲載が決定している。 また、低栄養をキーワードとして論文検索を実施し、主な論文内容を収集した。28年度に実施した高齢女性への面接調査の分析は29年度中に7割を終えることができた。今後も引き続き実施する予定である。28年度に実施した高齢者の面接調査のテープ起こしについては、29年度中頃まで時間を要したため、分析期間が後ろに移動した。したがって、30年度前半までにすべての逐語録の分析を完了させ、全体のまとめを今年中に行い、論文執筆と投稿を行う予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
30年度は、施設視察をもとに得られた知見を、日本家政学会でポスター発表をする。また、投稿中の学科紀要論文の校正を行う。さらに、低栄養についての先行研究をまとめ、執筆を行う。 高齢女性から得られた逐語録ををM-GTAの手法を用いて分析する。その結果を用いて、食事摂取に対する認知がどのように変化してきたかその変化のプロセスを把握する。その上で、低栄養予防にどのような心理的支援が必要なのか、可能なのかについて執筆して、研究成果の公表に繋げる。 また、本研究で用いた先行研究を使用し、「日本家政学会誌」に掲載予定の「高齢者の低栄養とフレイルティ」(依頼原稿)を学会に送付中であり、今後、校正を行ってよりよい内容としていく。
|
Causes of Carryover |
平成29年度は予定していたよりも旅費の支出が少なかった。これは、海外旅費について分担者は私費で賄ったこと、研究代表者は、海外旅費について格安ホテルを用いたことによる。国内旅費については、学会に合わせて研究打ち合わせを実施したため、打ち合わせに要する旅費が予定より少なくなった。次年度使用分については、30年度は、分析についての研究打ち合わせを頻繁に行うため、東京―京都間の往復旅費の回数が増える。また、学会投稿費用なども発生するため、翌年度分として請求する。
|
Research Products
(3 results)