2021 Fiscal Year Research-status Report
保育者養成課程で保護者支援を実践できる力をもつ保育者を養成する教育方法の研究
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16K00770
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Research Institution | Kobe Tokiwa University |
Principal Investigator |
中西 利恵 神戸常盤大学, 教育学部こども教育学科, 教授 (60237328)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
曲田 映世 相愛大学, 人間発達学部, 講師 (10760944)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 保護者支援力 / 子育て支援力 / 4年制保育者養成 / 教育方法 / 保護者参加型教育プログラム / 実践経験 / 文献研究 / 評価指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、保育者養成課程において、保護者に対する支援を実践できる力をもつ保育者を養成するための教育方法を開発することである。 本年度も新型コロナウイルス感染症対策下のため、開発した保護者参加型教育プログラム(以下、教育プログラムという)での活動経験をふまえた育ちの変容からの検討については、実質的な研究活動を進められなかった。新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、本来の研究方法による継続の見通した立たないため、研究方法の追加を検討した。 本年度については、教育プログラムでの実践経験の違いの分析から、保護者支援・子育て支援実践力にかかる内容の検討を試みた。開発した教育プログラムに参加(コロナ禍以前は年20回程度の教育プログラムの実施が可能となっていた)して保護者と関わる経験を有する学生と、全く経験がない学生を比較し、保護者支援・子育て支援に関する捉え方や理解の違いについて探った。具体的には、保護者支援・子育て支援について学習する3回生後期科目「家庭支援論」で実施する演習課題への取り組み内容の分析を通して検討を試みた。教育プログラム経験1回以上の学生の「あり群」と、全くない実践経験「なし群」の記述内容を分析した結果、「あり群」の方が保護者を対象とした記述が多く、内容的にも「表現力(コミュニケーション力、話を伝える力、話し方、会話力)」や、「対人力(受容、柔軟な対応力、感情コントロール力等)」に関する記述が多くなっていた。教育プログラムでの実践経験が、保護者支援・子育て支援に求められる力を具体的に捉えている様子が示唆された。特に、『挨拶ができる』は「あり群」の約58%が記述しており、実践経験を通し必要性・重要性を実感していることがうかがわれた。また、子どもとの関わりは、「なし群」も「あり群」も、保護者支援においてはまずは子どもの支援が大切であると捉えていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
「研究実績の概要」にも記載した通り、開発した保護者参加型教育プログラム(以下、教育プログラムという)での活動経験をふまえた育ちの変容からの保護者支援に関する教育内容の検討は進められなかった。教育プログラムでの活動を継続する4回生で編成したグループ討議を年度末に実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、令和元年度・2年度に続き、令和3年度も実施できなかった。教育プログラムの実施そのものも2回のみ人数制限の元での実施となり、コロナ禍以前の方法で実施はできなかった。 研究方法の見直しとして、教育プログラムでの実践経験の違いの分析から、保護者支援・子育て支援実践力にかかる内容の検討する方法を追加した。経験回数によりグループ編成し、グループ討議を行う方法を計画した。また、教育プログラムの実践経験「あり群」と「なし群」に分類し、保護者に対する子育て支援の担う保育士等に必要な資質・能力に関する自由記述の分析から、教育プログラムでの実践経験が、保護者支援・子育て支援に求められる力を具体的にとらえていることが示唆された。さらに、新たな保護者支援の内容(教育内容)の検討方法として、戦後から現在までに刊行、告示された幼稚園教育要領の解説書から、保護者を対象とした支援に関する内容を分析し、保護者支援の教育内容に関する示唆を得た。現在、実践経験の比較的豊富な学生を対象に、保護者関連の自由記述の分析から養成段階での保護者実践力について検討中である。 なお、学生にわかりやすい実質的な教育内容を提案するため当初の研究方法として計画していたグループ討議(それまでの討議内容や教育プログラムの活動記録をテキスト分析した結果等をふまえ、上の学年と一緒に活動する効果や担当制・非担当制の効果等について具体的に討議)は、コロナ禍により4年目以降でのデータ収集ができなくなったため中断している。
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Strategy for Future Research Activity |
保育者養成校段階における最低限必要となる知識・技能等(ミニマムスタンダード)の設定について、文献調査を継続する。現在、保護者支援・子育て支援の実践力に関する保護者対応行動尺度や、保護者対応に関するルーブリック、保護者支援に関わる力量形成に関するカテゴリー、保護者支援活動の社会的スキル、子育て支援力尺度、子育て支援事業への参加が学生相互の気づきに与える影響項目、子育て支援の困難度等に関する論文等30件について、設定されている尺度に関わる項目を抽出中である。次の段階として、抽出した評価に関する項目の分析方法を検討する。そして、今後予定している保護者との交流経験が比較的に豊富な学生を対象とした分析結果と合わせて、子育て支援実践力の評価項目内容について検討する。具体的には、開発した教育プログラムでの実践経験を積んだ学生からの気づきに関する自由記述の分析や、保護者に対する子育て支援を担う保育士等に必要な資質・能力についてのグループ討議内容の分析、さらにコロナ禍以前に実施した教育プログラムの実践映像や逐語記録内容との検証を通して、保育者養成段階における保護者支援・子育て支援実践力の資質評価の視点を検討する。ここで得られた視点と文献からの分析から抽出した評価項目を統合し、保育者養成段階における保護者支援実践力の評価の視点と評価デザインの構想を試みる。保護者支援に関する知識の習得に向けた意欲をより適切に評価するため、知識の習得の実態を正しく自己判断できるルーブリックあるいはチェックシート等の提案をめざす。また、神戸常盤大学においても、開発した保護者支援力・子育て支援力を養成する教育方法を導入する。次年度は教育プログラムの試行を予定している。
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Causes of Carryover |
(理由)「研究実績の概要」及び「現在までの進捗状況」にも記載した通り、令和元年度・2年度に続き、令和3年度も、開発した教育プログラムを履修した学生でのグループ討議が実施できなかった。教育プログラムの実施自体も困難であった。その結果、年度末に実施する予定であったグループ討議用の謝金とテープ起こし委託費の使用額が不要となった。学会等もオンラインとなり旅費も未使用となった。グループ討議用の謝金並びにテープ起こし委託費については、前々年度からの未使用分も含まれる。 (使用計画)現時点では新型コロナウイルス感染症の影響により、予定している教育プログラムの実施やグループ討議の実施については見通しが立たない状況であるが、可能な範囲で実施は試みたい。一方、「今後の研究の推進方策」に記載した通り、先行研究の調査を継続し、保護者対応や子育て支援の実践力に関するルーブリック評価、行動尺度、力量形成カテゴリー等に関する研究内容を抽出する。また、研究方法として追加した保護者との交流経験が比較的に豊富な学生を対象し保護者に対する子育て支援を担う保育士等に必要な資質・能力についてのグループ討議の実施とその内容分析を予定している。 図書・学会費等(\140,000)。グループ討議の協力者への謝金(\50,000)。テープ起こし用委託費(\50,000)。
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Research Products
(1 results)