2018 Fiscal Year Research-status Report
テラヘルツ分光分析による繊維識別法における試料加工法とスペクトル解析に関する研究
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16K00777
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
倉林 徹 秋田大学, 理工学研究科, 教授 (90195537)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
淀川 信一 秋田大学, 理工学研究科, 講師 (90282160)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | テラヘルツ分光分析 / 繊維中の損傷評価 / βシート構造 / セルロース結晶構造 / 偏光分光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、テラヘルツ帯に特徴的なスペクトルを生じるシルク繊維とセルロース繊維である綿繊維に着目し、以下の現象を明らかにした。 シルク繊維に特徴的な7.2 THz付近の吸収ピークとセルロース繊維に特徴的な5.2 THz付近の吸収ピークは、機械的損傷(ボールミルによる粉砕時間依存性)によってそれぞれ指数関数的にピーク強度が減少することから、テラヘルツ分光分析によって繊維種中の損傷の状況を精度良く定量化できることを実験によって初めて確認した。 シルク中の7.2 THz付近の吸収ピークは、フィブロインフィルム(ランダムコイル型アモルファス薄膜構造)をメタノール浸漬させた場合に形成される逆平行βシート構造の吸収ピークを一致することから、フィブロインのβシート結晶構造に対応することを同定した。また、セルロースの5.2 THz付近の吸収ピークは、繊維を一方向に配列し直線偏光したテラヘルツ波の吸収特性を測定する偏光分光分析を行った結果、繊維軸方向に吸収ピークの偏光性がみられることから繊維のミクロフィブリル中に内在するセルロースI型結晶であることを同定した。 シルクの場合にはβシート構造が、ミクロフィブリル構造をシート化したシルクナノファイバーシートでも観測されたことから、βシート構造もミクロフィブリル中で軸方向に結晶化していることが確認された。これらの結果は、繊維中に生じる損傷を同定するための新規な指標となり得ることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テラヘルツ帯に特徴的な吸収スペクトルを持つ繊維種の定量分析を行い、一次微分スペクトルを定量化することで繊維中の結晶構造(シルク繊維ではミクロフィブリル中のフィブロインのβシート構造、綿繊維ではミクロフィブリル中のセルロースI型結晶の高精度の定量化が可能となり、この定量化によって繊維中の欠陥量を検出可能となった。この結果は新たな応用展開につながる重要な結果であると考えられる。繊維中の欠陥を生じさせる熱的刺激、機械的刺激、さらには電磁波照射などによる繊維欠陥の定量化が可能になり、繊維中の欠陥測定による新規な研究展開が期待されるものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
テラヘルツ帯に特徴的な吸収スペクトルを持つシルク繊維に内在するβシート結晶構造、および綿繊維に内在するセルロースI型結晶の高精度定量化が可能となり、これによって繊維中の欠陥量を検出可能となった。今後、繊維中の欠陥を生じさせる熱的刺激、機械的刺激、さらには電磁波照射などによる繊維欠陥の定量化を行うとともに、ヒトの頭髪や各種動物繊維種や合成繊維種における欠陥測定などに拡張し、新規な応用研究の展開を目論む。
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Causes of Carryover |
本研究の成果として次年度に国際会議参加を予定しているため、学会参加費や旅費に当該助成金を充てることを計画している。
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