2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K00785
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
藤平 眞紀子 奈良女子大学, 生活環境科学系, 准教授 (90346304)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 維持管理 / 継承 / 伝統的木造住宅 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の調査対象地域(T街道付近)では、住み手の高齢化の進行、同居家族の減少、さらに空き家の増加などから、従来のような住み手自身による住まいの維持管理が行われにくくなっている。一方で、約10年前に始まった住民による町づくり活動により、住み手の町並みへの意識は高まりつつある。そこで、地域住民を主体とした、住み手と地域による伝統的木造住宅の維持管理と継承について、その可能性を探り、今後のあり方を考察することを本研究の目的としている。平成28年度は以下の検討を行った。 (1)T街道付近に居住する住民を対象として、空き家の管理に関するアンケート調査を行い、空き家に対する意識や空き家の管理に対する協力および受け入れ意向などを把握した。その結果、地域住民による空き家の管理において、体力的な不安、内容によっては技術的な不安、また、家や敷地に入る抵抗感などから、実際に行うことはやや難しい状況であることがわかった。一方、できることは協力したいと思う居住者もおり、外回りの簡易な作業への取り組みの可能性がみられた。さらに、空き家の管理における地域住民による管理の可能性について、地域住民の町づくり活動への関わりが影響していることがわかった。 (2)T街道の空き家を活用したギャラリーで開催された、地域住民による町並み写真展において、来場者へのアンケート調査を実施した。来場者(多くは地域住民)は伝統的な木造住宅が残る町並みを魅力と思い、残していきたいと思いつつ、現実的には維持管理の大変さ(人的資源や経済的資源において)を感じており、理想と現実の間で、思い悩んでいる様子が伺えた。伝統的木造住宅の維持管理において、個人による自助だけではなく、地域住民同士の共助、行政も含めた公助が必要であると考えられる。特に、空き家については、行政の果たすべき役割は大きく、すぐに対応していかなければならないといえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画にしたがい、おおむね順調に進展している。 具体的には、(1)空き家の管理に関する地域住民の意識について、アンケート調査より、体力的な不安、内容によっては技術的な不安、また、家や敷地に入る抵抗感などから、実際に行うことはやや難しい状況であることがわかった。一方、できることは協力したいと思う居住者もおり、外回りの簡易な作業への取り組みの可能性がみられた。さらに、空き家の管理における地域住民による管理の可能性について、地域住民の町づくり活動への関わりが影響していることがわかった。今後、今までに経験してきた伝統的木造住宅での住まい方や維持管理の仕方を活かしつつ、現代の暮らしとの調和をとり、また、今までに培ってきた地域住民のつながりや共助、さらにこれからは行政との協働や行政による公助とともに、伝統的な町並みの残る地域での地域住民による空き家の管理が進められていく可能性はあると考えられ、さらに検討を進めていく。 (2)町並み写真展来場者へのアンケート調査より、地域住民は伝統的な木造住宅が残る町並みへの思い確認できた。また、このような写真展により、地域住民が町並みを振り返り、今後を考えるきっかけになったと考えられた。地域住民の思いを、地域住民同士の共助、行政も含めた公助につなげていく仕組み作りを考察していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の調査結果を詳細に検討しながら、地域住民を主体とした、住み手と地域による伝統的木造住宅の維持管理と継承について検討を進める。今年度は、伝統的木造住宅の保全や活用に関する活動を行っている他の地域での事例を対象に、現地視察や現地ヒアリングなどを行い、本調査地域に即した住まいの維持管理のあり方を検討する際の参考としていきたい。町並み保存や町づくりという視点から、個々の住宅および空き家の維持保全にかかわる既往の研究の整理や現地視察や現地ヒアリングなどを行い、本調査地域に即した住宅の維持管理のあり方を考察する。また、地域住民による空き家の管理について、他地域における地域住民活動組織へのアンケート調査を行い、現状把握および課題を整理し、地域の状況に即した空き家管理の可能性を探る。 また、地元NPOが運営する空き家での地域住民活動に、住まいの維持管理や空き家の管理・活用がどのような形で受け入れられ、実践されていくか、その可能性を探る。あわせて、地域住民の反応や意見の収集も行い、検討を深める。 そして、住み手のみならず、地域として住まいの維持管理にかかわること、街道筋の伝統的木造住宅を使い続けながら継承していくことについて、地域住民活動とともに検討する。 さらに、得られた結果を取りまとめ、学会等で成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
地域住民へのアンケート調査において、郵送による回収を計画していたが、地域住民活動の中で回収できることとなり、回収用の郵送費が抑えられた。また、対象地(県内)への調査等において、日程調整の都合から、単独で行うことが多く、人件費および旅費が予定より抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
他地域での事例調査について準備を進めており、実施予定である。現地調査実施のための交通費および情報収集のための補助および情報のデータ整理の謝金として使用する。また、他地域における地域住民活動組織へのアンケート調査を行う予定であり、アンケートの送付および回収の郵送費として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)