2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K00787
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
檜谷 美恵子 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (60238318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高齢居住 / 共同住宅 / 団地集会所 / 共用空間 / 敬老堂(韓国) / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度にあたる本年度は、①韓国ソウル市でタイプの異なる複数の団地を選定し、それぞれの団地内に設置されている高齢者向けの共用施設である「敬老堂」について、その空間特性、利用者特性、運営状況、運営課題を把握するための調査を実施した。②フランスについては、共同住宅における高齢者居住の動向に関する資料を収集し、近年の動向を把握した。さらに、③日本で、高経年の共同住宅を対象に、団地に設置された集会所の利用実態を探るとともに、高齢居住者の生活実態に関するインタビュー調査を実施した。 韓国では一定規模の共同住宅団地では敬老堂の設置が義務付けられているが、団地内の高齢者に利用を限定するところと、近隣の高齢者も受け入れ、地域の高齢福祉施設としても機能しているところがあるなど、利用実態は団地によって異なる。敬老堂の施設整備水準も設置年や居住者の社会階層などによって異なる。また、活用を促進する観点から、行政が補助や表彰の仕組みを設け、より効果的な運営を競わせているところもある。運営は原則、住民自治に基づくものとなっているが、利用者、運営者ともに高齢で、運営側の人材確保に課題がある。 他方、フランスでは、高齢者が若者あるいは若年家族世帯とともに居住する共同住宅が開発されている。また、集会所等の共用空間は、居住者のみならず、地域の居住者や活動団体等と交流する場として活用している。日本では、高齢居住者が目立って増えている団地で、その見守り活動などの意義が共有される傾向がみられ、共用空間である集会所が高齢者の集まりの場として活用されるなどしている。このように高齢者が居住する共同住宅では共用空間で高齢者を支援する活動が展開されているが、韓国、日本では同世代間の連帯、フランスでは異世代間の連帯が強調される傾向を把握した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って、韓国、日本で予備調査に着手し、高齢期における共同住宅居住には、居住の場を軸につながる近隣による支援を受けやすいという研究仮説の妥当性を、主として敬老堂をはじめとする共用施設の利活用に着目して、調査、検討することができた。また当初は次年度以降に計画していた日本の高経年共同住宅に着手し、傾向を把握することができた。一方、比較対象としていた予定していたフランスについては、文献調査に終始し、現地調査を実現できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの文献調査、フィールド調査で得られた知見をもとに、研究仮説を精緻化するとともに、韓国では事例をさらに増やして調査するとともに、フランスで高齢者世帯向け住戸と若年家族世帯向け住戸の混合開発事例などを対象に、その空間特性や利用、運営実態や課題に関する実態調査を計画、実施したい。日本については、昨年度実施した高経年団地でのアンケート調査の分析をすすめ、高齢居住者の居住満足度やニーズを多角的に検討したい。
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Causes of Carryover |
当初、フランスで共同住宅団地の実態調査を予定し、その経費を見込んでいたが、実現できなかったこと、韓国での調査についても、より長期間の調査を見込んでいたものの、実際には短期間調査になったことから、使用額が予定よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、フランスでの実態調査をすすめるとともに、昨年の日韓での調査結果を踏まえて、より詳細な調査ならびに調査結果の分析を進める予定である。このための海外渡航費と、調査協力者およびデータ整理補助者への謝礼(人件費・謝金)が必要である。また統計解析ソフトの購入(物品費)を予定している。
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