2017 Fiscal Year Research-status Report
中古住宅ストックの改修・活用にみる日本的住様式の展開
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16K00788
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小伊藤 亜希子 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (90257840)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 忍 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (50190038)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中国 / 都市集合住宅 / 住み方 / 大阪近代長屋 / 住様式 / 伝統的住空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
①中国の都市住宅調査については、昨年の東北地域である吉林省の調査に引き続き、当該年度は、江南地域の蘇州市の調査を実施した。蘇州市の集合住宅団地を、建設年代により3区分した上で、それぞれの団地を複数選定し、居住者に対する住生活に関するアンケート調査と、うち協力を得られた12軒への訪問住み方調査を実施した。 江南地区の都市集合住宅は、1994年の住宅商品化政策を経て、住戸規模は100㎡を越え、3室2庁を中心として、餐庁と客庁の2庁型プランが一般化している。住み方をみると、食事空間としての餐庁と、接客、団らん空間としての客庁の用途があいまいになり、年代が新しくなるほど、両空間の一体化が進んでいることが確認された。日本的住様式に通じる上下足の履き替え様式はほぼ定着し、新しい住宅ほど厳格化しているが、床暖房がない地区のため、東北地方に比べても床座の起居様式の浸透はない。しかし若い年齢層では部分的に床座の生活が見られた。以上のように、近代化が進む中国都市住宅の住空間構成と住様式の変化を、地域差もふまえて、住生活の視点から捉えることができた。 ②新規入居者による大阪近代長屋の住み方調査については、前年度の調査結果を分析し、日本の伝統的空間特性が現代の新しいライフスタイルを選択する居住者の住み方の中で活かされていることを確認した。この結果は、日本建築学会近畿支部研究報告集に2本投稿発表し、日本家政学会関西支部研究発表会でも報告した。また日本建築学会学術論文集にも投稿し、現在再査読中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中国における都市集合住宅調査については、昨年の東北地区に引き続き、今年度は江南地区の蘇州市で実施し、両地区の比較も含めて興味深い結果が得られた。
新規入居者による大阪近代長屋調査については、昨年度の調査結果を分析し、いくつかの論文、口頭発表として公表した。また現在投稿中のものもある。さらに、シンポジウムなどでも報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
中国の都市住宅調査については、28年度の東北地区、29年度の江南地区の集合住宅調査を実施した。これら2地区の調査のなかで、両地区ともに上下足の履き替え様式は定着しつつあったが、日本の住様式に通じるユカ座様式は東北部で進んでおり、その原因として伝統的なカンとよばれる床暖房が大きく関わっていることが推測された。よって、今年度は、これまでの調査に引き続き、東北地区の伝統的民居の残る地域での調査を予定している。 大阪近代長屋の調査については、現在投稿中の住様式に関する論文に加えて、中古住宅の改修に焦点をあてて分析した結果を論文として投稿予定である。
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Causes of Carryover |
今年度は調査旅費が中心になった。次年度は、これらの調査結果のデータ解析、図面作成等、とりまとめのための研究補助謝金を予定している。また、研究成果を論文投稿、学会発表するための費用として使用する予定である。
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