2016 Fiscal Year Research-status Report
疑似白色LED光源の新規な演色性評価法の開発とその応用
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16K00807
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Research Institution | Osaka Municipal Technical Research Institute |
Principal Investigator |
吉村 由利香 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究室長 (00416314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大江 猛 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, 生物・生活材料研究部, 研究主任 (10416315)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 疑似白色LED / 分光分布 / 分光反射率 / 演色評価数 / 色差 / L*a*b* / XYZ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究結果で,演色評価数で評価されたLED光源の演色性はヒトの視感と相関が悪く,正確な評価ができていないことが分かった。これは,現行の演色評価方法が2種類の補色光から成るLEDのような疑似白色光を想定していないことが要因と考えられた。そこで,疑似白色LED照明に適応可能な演色性の評価方法を研究するため,本年度は以下の方法で実験を行った。 まず,評価系を作成するためのデータとして,疑似白色LED下の色彩とCIE昼光とのズレについて詳細な分析を行った。代表的な色相(赤,黄,緑,青,日本人の肌色)の物体色について,各種照明による色彩値L*a*b*の違いを算出しバラツキを調べた。黄,緑,肌色の物体色は光源の違いによる色彩のバラツキは比較的少ないが,赤系の色彩は疑似白色LEDで彩度が低くなる傾向があった。青色の色彩は,疑似白色LEDで色相が赤味にシフトした。これらの色彩のズレは,各光源の分光分布と物体色の反射率の関係で生じると推測された。赤の色彩は600nm以上に高い反射率を持つが,疑似白色LED,普通形蛍光灯ではこの領域のエネルギーが低いために,光源の分光分布と物体色の反射率を乗じた反射光曲線の傾きが小さくなり,彩度が低下した。青色の色相のシフトについては,疑似白色LEDの半値幅の狭い青色ダイオードのスペクトル波形が反射光スペクトルの波形に影響を及ぼしていると考えられた。 次に,これらの物体色について,疑似白色LED下の色彩(試験光下色)とCIE昼光(LEDと同じ相関色温度)下の色彩(基準光下色)について色差⊿E*を算出し,LEDのCRI値と⊿E*値の関係を調べた。その結果, ⊿E*値に対するCRI値は色相によって異なることが分かった。この結果は,演色評価数CRI値とヒトの実際の視感との解離を示すもので,この解離を数値化することで演色系の補正が可能と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,疑似白色LED照明下の色彩の見え方の特徴を調べるため,代表的な分光分布を持つ昼光色疑似白色(LED3)と,このランプと同じ色温度の太陽光(CIE昼光)について,各色相の物体色のL*値,a*値,b*値を比較した。L*値は,すべての色相において,LEDと太陽光とで良好な一致を示した。この傾向は蛍光灯でも同様であった。a*値,b*値は,色相に依存して,LED照明と太陽光で差が認められた。LED照明による物体色のズレ方向は,太陽光に対して赤の色彩は彩度が低下する方向へ,黄と緑の色相は黄緑方向へ,青の色相は赤味が増える方向にシフトした。また,彩度が高い色彩ほどズレ量が大きくなる傾向が認められた。RGBの三波長形の蛍光灯F10ではズレ量は疑似白色LEDの場合よりも小さく,ズレの方向も異なった。これによって,疑似白色LEDのL*a*b*値のズレ方の特徴が明らかとなった。 次に,代表的な色相(赤,黄,青,緑)について,LED3下の色彩(試験光下色)とCIE昼光(LED3と同じ相関色温度6463k)下の色彩(基準光下色)の色ズレを⊿E*値をパラメータとして算出することを試みた。まず,測定した試料光源の分光分布,XYZ等色関数(2°視野),物体色反射率から,試料光源による物体色のXYZ値を得て,試料光源下における物体色のL*a*b*値を算出した。基準光源としてLED試料光源と同じ相関色温度のCIE昼光または完全放射体の標準光を用い,基準光源下の物体色L*a*b*と,試料光源下のL*a*b*から,光源の違いによる色差⊿E*を算出した。その結果,LED3のCRI値と⊿E*値の関係は, ⊿E*値に対するCRI値は色相によって異なり,これをパラメータとして用いることで,演色評価系の補正が可能であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究A:疑似白色LEDに対応した演色性評価方法の開発(A-3 LED光源用演色性評価方法の開発(前年度の続き)) 前年度の結果として得られたLED光源の演色評価数と色差について相関を調べ,種々の色相・明度・彩度毎に両者を合致させる補正係数を算出する。これを用いて,視感に合致するよう従来の演色性評価方法を修正し,疑似白色光に対応可能な演色性の評価方法を構築する。 研究B:高い演色性を持つ疑似白色LEDスペクトルの研究(B-1 疑似白色LEDのスペクトル分布と演色性の関係) 前年度に検討した演色性評価システムを応用し,LED光源のスペクトルの波形が演色性に及ぼす影響を調べる。測定した疑似白色LED試料光源の分光分布,XYZ等色関数(2°視野),物体色反射率から,試料光源下における物体色のXYZ値(視細胞から脳に送られるRGBの刺激量)を算出する。疑似白色LEDの分光分布の波形とこのXYZ刺激量の関係からLED光源のスペクトルの波形が演色性に及ぼす影響を調べる。
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Causes of Carryover |
購入した機器が予定金額よりも安価であったため,次年度繰越金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降の物体色試料の作成,フィルター試作費用等に使用する。
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