2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K00808
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
酒井 昇 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (20134009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福岡 美香 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10240318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 通電加熱 / 畜肉 / 卵 / タンパク質変性 / 電磁界解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
通電加熱調理法の開発を目的として、以下に示す調理実験および理論的な解析を行った。 まず、食材として牛肉と卵を選定し、LCR メータを用いて通電加熱の基礎データである電気伝導度の測定を行った。肉については脂肪含量の異なるサンプル(和牛とオーストラリア産ビーフ)を用意し、卵については卵黄と卵白を分離して測定した。その結果、脂肪が肉の内部に入っている和牛のほうが電気電電導度が小さいこと、卵黄よりも卵白のほうが電気伝導度が大きいことが明らかとなった。 本研究で対象とする牛肉および卵は、加熱とともにタンパク質が変性し、加熱にともなって、どの程度タンパク質変性が進行するかを検討するためには、変性速度定数の取得が必要である。牛肉については既に測定データがあるので、DSCダイナミック法を用いて、卵のタンパク質変性速度定数を推定した。また、卵の場合、タンパク質変性にともない、白濁(卵白)および色(卵黄)の変化が起こる。ここでは、加熱時の卵白の白濁を吸光光度計、卵黄の色の変化を色彩計を用いて測定し、タンパク質変性との相関を試みた。その結果、卵白ではトランスフェリンとアルブミンの変性がDSCで確認され、アルブミンの変性が白濁をもたらすことが示された。同様に、卵黄についてもDSCで2つのピークが観察され、2つ目のピークのタンパク質変性が色の変化をもたらすことが示唆された。 次に、通電加熱における発熱の解析解析を行った。解析には、多くの場合、ジュールの法則が使用される。しかし、本研究で用いている20kHzの高周波電源では、マクスウェルの方程式を解くことが必要となる。そこで、市販の電磁界解析ソフトを使用したが、発熱性を決める電気伝導度は温度依存性があるため、食品内部の温度計算も同時に行い、電磁界解析と熱移動解析を連成して行った。マグロの通電加熱実験と比較検討したところ、解析結果と良好に一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タンパク質食品の加熱においては、タンパク質変性の制御は極めて重要であり、タンパク質変性を予測するためは、タンパク質変性速度定数の値が欠かせない。2016年度に試料として用いた卵のタンパク質変性速度定数の公表された値はなく、本実験により測定した。さらに、卵黄、卵白の加熱実験を行い、その温度変化とタンパク質変性・色変化の関係を明らかにし、国際学会(EFFoST(European Federation of Food Science and Technology)International Conference)で発表した。 また、牛肉(和牛、オーストラリア産ビーフ)の電気伝導度および通電加熱特性については、国内学会2件(日本食品工学会)、国際学会1件(EFFoST International Conference)を、2017年度に発表する。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね研究計画どおりに研究が進行しており、2017年度は食材として牛肉、卵の他に、需要の多いハンバーグを使用して研究を推進する。具体的な検討課題は次のとおりである。 1.電気伝導度測定 ハンバーグの電気伝導度の公表値はないため、LCR メータを用いて測定する。調理時に加える塩分によっても電気伝導度は変化するため、塩分等の食材に加える添加物の影響も検討する。また、凍結したハンバーグ原料を加熱調理することを想定し、マイナスの温度域から測定する。 2.非平行食材の加熱 固体食品を通電加熱で加熱する場合、平行電極が使われる場合が多い。試料とするハンバーグはラグビーボール状の形をしているため、平行電極が使えない。そこで、多くの可動式ピンからなるピン型電極を試作し、ハンバーグのような不定形な食材でも通電加熱が可能か検討する。 3.食品品質変化解析 本研究で対象とする畜肉および卵は、加熱とともにタンパク質が変性し、加熱しすぎると固くなり食感が悪くなる。食品内温度分布にしたがい、どの程度タンパク質変性が進行するかを実験的に定量化することは不可能である。そこで、シミュレーションにより、通電加熱時の温度分布変化にともなうタンパク質変性分布を予測する。具体的には、通電加熱の解析に加えて、加熱にともなうタンパク質変性の解析ができるようにモデルを改良する。また、解析をするためにはタンパク質変性速度が必要となるため、食材を構成しているタンパク質の変性速度定数を、DSC ダイナミック法を用いて推算する。その際、タンパク質変性速度の温度依存性をアレニウスの式で表し、そのパラメータである頻度因子と活性化エネルギーを求める。 また、食品産業においては、食品のおいしさに加えて、調理した時の安全性が重要である。そこで、加熱に伴うタンパク質変性の他に、食品内部の殺菌価分布についても計算できるようにモデルを改良する。
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Causes of Carryover |
発熱量をコントロールできるように、ソフトのカスタマイズ依頼を2016年度に行ったが、納品が2017年度となった。カスタマイズ費について次年度使用額とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額(B-A)については、ソフトカスタマイズ費として使用し、残りは実験材料費とする。
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Research Products
(3 results)