2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K00808
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
酒井 昇 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (20134009)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福岡 美香 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (10240318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 通電加熱 / 畜肉 / 熱移動解析 / タンパク質変性 / 電磁界解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
通電加熱調理法の開発を目的として、以下に示す調理実験および理論的な解析を行った。 1)ハンバーグ まず、ハンバーグを試料として、LCR メータを用いて通電加熱の基礎データである電気伝導度の測定を行った。ハンバーグを30㎜×30㎜の立方体に成形し、電極に挟んで通電加熱し、所定温度に到達後、LCRメータを用いて、インピーダンスおよび抵抗を測定した。電源周波数は50Hzと20kHzとし、測定温度を10℃から80℃まで10℃刻みで測定を行った。その結果、測定温度が高いほど電気伝導度は高くなること、周波数が50Hzに比べて20kHzのほうが電気伝導度が高くなることを明らかにした。次に、ハンバーグを直径85㎜、高さ15㎜の円盤状に成形し、上下を電極で挟んで通電加熱実験を行った。商用周波数50Hzの場合、電極の腐食が激しく、ハンバーグの加熱に商用周波数電源は向かないことが判明した。また、周波数20kHzの電源を使用して加熱した場合、温度が高温になるのに従い、ドリップが発生するとともに変形が起こった。そのため、電極との接触が悪くなる問題が発生した。この点については、平成30年度に検討する。 2)卵 卵に関しては、28年度に卵黄卵白の電気伝導度、タンパク質変性速度を測定した。29年度は、タンパク質変性に伴う、液卵の物性変化として動的粘弾性を測定するとともに、全卵の通電加熱実験を行った。卵黄について、一定温度上昇下で貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”を測定した。G’の大きいものは固体の性質、G”の大きいものは液体の性質を示す。昇温途中でG’とG”の大きさは逆転したが、その逆転する温度帯はタンパク質変性の温度帯と一致し、卵黄の固体化についてタンパク質変性により定量化することができることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度は、牛肉(和牛、オーストラリア産ビーフ)の電気伝導度および通電加熱特性について、国内学会2件(日本食品工学会)、国際学会1件(EFFoST International Conference)において発表するとともに、国際学術誌(Journal Food Engineering)に論文が掲載された。さらに、牛肉の通電加熱時の温度解析とタンパク質変性解析を行った論文を国際学術誌(Journal Food Engineering)に投稿予定である。 また、卵について、通電加熱時の卵黄の色の変化・卵白の白濁化とタンパク質変性の関係について、国際学術誌(Journal Food Engineering)に掲載された。 さらに、食材として牛肉、卵の他に、需要の多いハンバーグを使用して行った研究について国内学会(日本食品工学会)で発表予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね研究計画どおりに研究が進行しており、30年度は、食材として畜産物(牛肉、卵、ハンバーグ)の他に水産物(ホタテ貝柱)を使用して研究を推進する。具体的な検討課題は次のとおりである。 28年度、29年度に測定した各食材の電気伝導度およびタンパク質変性速度定数を用いて、通電過程のシミュレーションを行い、通電加熱時の温度分布変化にともなうタンパク質変性分布を予測し、以下の各食材について最適な加熱条件を検討する。 (1)ハンバーグ:固体食品を通電加熱で加熱する場合、平行電極が使われる場合が多い。試料とするハンバーグは、29年度の結果により加熱途中で変形し、電極との接触が悪くなる。また、一般的にはラグビーボール状の形をしているため、平行電極が使えない。そこで、多くの可動式ピンからなるピン型電極を試作し、ハンバーグのような不定形な食材でも通電加熱が可能か検討する。 (2)卵:全卵を通電加熱すると卵黄よりも卵白のほうが電気伝導度が高いため、均一には加熱されない。さらに卵黄を包んでいる卵黄膜は電気伝導度が低いため、より不均一化が起こる。この不均一性を考慮した上で、必要な殺菌条件を満足する加熱条件を理論的に明らかにする。 (3)肉、魚などを加熱調理する場合、加熱しすぎると固くなり食感が悪くなる。この加熱しすぎを回避するために低温調理法が用いられている。お湯や蒸気を用いた従来の低温調理法の代わりに通電加熱を適用し、その有用性について、理論的に明らかにする。食材としてはビーフ(畜肉)とホタテ貝柱(水産物)を予定している。
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Causes of Carryover |
次年度は最終年度で、インドで開催される国際会議(19th IUFoST World Food Science and Technology Congress)で発表を予定している。2名分の旅費と参加費で約80万円必要となり、30年度の配分額では不足するために、次年度使用額とした。残額については実験材料費とする。
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