2017 Fiscal Year Research-status Report
食品のトライボロジーおよびレオロジーと咀嚼・嚥下との関係
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16K00809
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
田代 有里 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 講師 (10293094)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松川 真吾 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (30293096)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 咀嚼 / 嚥下 / レオロジー / トライボロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、ヒトの咀嚼嚥下行動を支配する食品のレオロジー因子を解明するため、テクスチュアの異なる食品を試料とし、レオロジーパラメータおよび静止摩擦係数と咀嚼行動との関係を調べた。 市販のコンニャク、食パン、生麩を試料として、テクスチュア・プロファイル・アナリシス(TPA)、応力緩和測定、静止摩擦係数測定を行った。また、健康な20代の男女20名の各パネルが試料を咀嚼嚥下する間の咀嚼回数、咀嚼時間を計測し、嚥下衝動時の食塊から唾液分泌量を計量し、画像解析ソフトにより食塊中の粒子の数と平均断面積を計測した。さらに、静止摩擦係数測定では、食塊の粒子サイズ分布と同様に食品を細断し、唾液の代替としてとろみ液を加えた人工食塊を作成して測定を行った。 静止摩擦係数は食品表面と比較して、食塊の方が有意に高かった。また、食品の種類に関わらず、食塊の静止摩擦係数がある一定値になるまで咀嚼が行われることが示唆された。さらに、食品表面の静止摩擦係数は、咀嚼回数、食塊中の粒子の平均断面積と負の相関、食塊中の粒子数と正の相関が認められたことから、食品表面の静止摩擦係数の大きい食品は咀嚼によって細かい粒子にして嚥下が行われていることが分かった。 ねばりと付着性において、咀嚼回数、食塊中の粒子の平均断面積、唾液分泌量と正の相関が認められたことから、ねばりや付着性が高い食品は噛み切られにくいため、食塊中の粒子の平均断面積が大きく、かつ多くの咀嚼回数を要し、そのため、口腔内での滞留時間が長くなり、唾液分泌量が多くなったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度は、動的粘弾性測定および動摩擦係数測定を実施する計画であったが、測定装置を借用させていただく研究機関との使用スケジュール調整等の連絡のすれ違いがあり、平成29年度中に測定を実施することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、昨年度実施できなかった動的粘弾性測定ならびに動摩擦係数測定を実施する。さらに、昨年度の成果から付着性が高い生麩、および凝集性の高い食パンの咀嚼嚥下行動には、レオロジーパラメータよりもテクスチュア・プロファイル・アナリシスパラメータや静止摩擦係数との相関が高く、これまでのゲル状食品で得られた知見とは異なっていたことから、これら2種類の性質の食品について詳細に検討する。具体的には、餅のような付着性の高い試料、また、咀嚼によって食品が凝集・硬化するスポンジケーキ等の食品を試料として、レオロジー、トライボロジーと咀嚼嚥下行動との関係を明らかにしていき、特に餅の窒息事故の検討につながる結果が得られることを期待している。 そして、これらの結果を総括し、学会発表ならびに学術論文投稿による成果発表を予定している。
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度は動的粘弾性測定および動摩擦係数測定を東京都立産業技術センターの測定装置を使用して実施する計画であったが、研究代表者(田代)が東京都立産業技術センターに使用申し込みをした後の東京都立産業技術センター内での連絡が滞ってしまい、機器使用スケジュールの調整が困難となり測定が実施できなかった。そのため、測定実施のための旅費と東京都立産業技術センターに支払う予定であった測定装置使用料(その他直接経費)が未使用となったため。 (使用計画)東京都立産業技術センターから機器使用の了解を得ることができたので、動的粘弾性測定および動摩擦係数測定を実施するための旅費と機器使用料(その他直接経費)として使用する計画である。
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