2017 Fiscal Year Research-status Report
未利用水産資源を機能性発酵食品へと活用するための生物有機化学的研究
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16K00816
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
杉山 靖正 鹿児島大学, 農水産獣医学域水産学系, 准教授 (90347386)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 食品 / 発酵 / 生理活性 / 抗酸化 / タカエビ / ヒメアマエビ |
Outline of Annual Research Achievements |
数多い未利用および低利用水産資源の有効利用を目指し、発酵技術を取り入れることで食材および機能性物質の探索源として活用することを目的としている。本研究では、未利用および低利用水産資源を材料に発酵食品を作製すること、さらに作製した発酵食品(魚醤油)に含まれる機能性物質について生物有機化学的な手法を用いて明らかにする研究を行っている。 本年度に行った研究について、得られた成果を簡単に説明する。 まず、タカエビ(ヒゲナガエビ)頭部を材料に醤油用麹を用いた方法で魚醤油を大量に作製した。次に、出来た魚醤油の機能性について検討したところ、DPPH法、ORAC法ともにナンプラーよりも抗酸化性に優れていることが明らかとなり、昨年と同様の結果が得られ、再現性が確認できた。そこで次に、作製した魚醤油に含まれる抗酸化物質の単離を試みた。作製した魚醤油を溶媒分画、DIAION HP20カラムクロマトグラフィー、Sep-Pak C18カートリッジ、逆相HPLC等を用いて精製することで、昨年度に単離に成功した2個の化合物に加え、1個の化合物を抗酸化物質として単離した。続いて、本年度新たに単離した抗酸化物質の各種NMRおよびMSスペクトルを測定することで、本化合物がN-(4-hydroxyphenethyl)acetamideあることを明らかにした。本化合物は抗腫瘍活性が報告されており、本研究で作製したタカエビ頭部を用いて作製した魚醤油に含まれる機能性物質といえる。 次に、昨年度から研究を行っている鹿児島湾にのみに生息し、小型で低利用水産資源であるヒメアマエビを材料に魚醤油を大量に作製した。作成した魚醤油の抗酸化試験を行ったところ、昨年度と同様に高い活性が明らかとなり再現性が確認できた。以上ことから新たに作製した魚醤油から機能性物質を取得するための準備が終了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に計画していた研究(次の(1)から(3))はほぼ終了しており、おおむね順調に進展しているものと考える。 (1) 平成28年度に機能性の高い魚醤油の材料としてヒメアマエビを見出すことができたため、来年度に機能性物質を単離するための材料を得ることが本年度の目的であった。本年度は計画通り、来年度に機能性物質を単離するのに必要な魚醤油を大量に作製することができた。 (2) 本年度は天候の問題があり計画通りに航海が実施できなかったため、研究対象をヒメアマエビに絞り、鹿児島湾内でのサンプリングを集中して行うことで、大量に材料を得ることができた。 (3) タカエビおよびヒメアマエビを材料に魚醤油を作成し、DPPH法およびORAC法により抗酸化活性を明らかにし、これまでの研究結果を支持する再現性が確認できた。 (4)機能性物質の単離に向けて現在研究を進めており、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
新年度より研究代表者の所属の変わったことに伴い、研究を推進する方法等について変更する必要はあるが、研究の本質事態の変更はなく、29年度に引き続き、作製した魚醤油から機能性物質を単離し、その化合物の化学構造を各種機器分析結果から明らかにする。
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Causes of Carryover |
(理由)天候の問題があり、計画していた航海の多くが中止となったことが理由の一つである。そこで、研究対象を絞ったことで、購入予定試薬等が翌年度に必要となるため、予算を繰り越すこととした。
(使用計画)研究対象を絞ったが、研究の本質には変更がないため、本年度から次年度までの継続研究項目の試薬購入費用として使用する。
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