2017 Fiscal Year Research-status Report
完全水添油脂が示す脳卒中病態モデル改善作用のメカニズムに関する研究
Project/Area Number |
16K00817
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Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
立松 憲次郎 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (70381720)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 完全水添油脂 / SHRSP / ステアリン酸 / 植物ステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、菜種油(キャノーラ油)を完全水添処理して得られる完全水添菜種油(FHCO)が、脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット(SHRSP)に対して、致死性脳卒中の発症を予防するメカニズムを検討するとともに、その有効性を他の系統、動物種にも応用できるかを明らかにすることを目的とする。今年度の検討では、以下の1)~3)について検討を行った。 1)FHCO摂取によるSHRSPの病態改善作用はドコサヘキサエン酸(DHA)を含んだ普通飼料に配合することで観察していた。DHA臓器蓄積が病態改善の一因である可能性を考えると、DHAを含まない飼料で飼育すると改善作用は確認されないと考えられた。しかし、AIN-93Gをベースとした飼料にFHCOの未添加した群と、FHCOとDHAを添加した群とでは、どちらも有意な血圧降下作用を示したことから、少なくてもFHCOそのものでも病態改善の一部を示す可能性が示唆された。しかし、DHA投与群では、FHCO単独処理では認められなかった脂質合成の調整作用などが観察されており、さらなる詳細な検討が必要と考えられる。 2)FHCO摂取の長期摂取が安全か、また、他のラット系統に対しても有効かを明らかにするために、Wistarラットに対して摂餌実験を行った。その結果、植物ステロールの蓄積を抑えるなど、SHRSPに摂取させた時と類似の結果を得られることができたが、実験期間中に体重量が対照群より増加したことなど、相違する結果も観察された。 3)FHCOは摂食量が増加するにもかかわらず体重減少が観察されるため、メタボリックシンドローム関連の疾患予防・治療に有効な可能性がある。そこで、肥満モデルマウスとして、C57BLKS/J Iar -+Leprdb/+Leprdbマウスを用意し、これに対する痩身作用、血糖値減少作用を期待したが、残念ながら特筆すべき有効性は観察されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)投稿論文の作成・報告が遅れており、急ぎ作成をしている。 2)長期飼育の動物実験で、一部、失敗があった。 3)冷却遠心機が故障してしまい、修繕に時間がかかってしまった。 4)培養細胞の実験系確立に時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 昨年度の実験で得られた結果を分子レベルで確認するために、ラット培養細胞の系を用いて、DHAやPSなどを特定の条件で添加して、ターゲット分子の発現、相互作用や細胞内運命を調べることで、分子的メカニズムを解明する。可能であれば、より効果的な分子型(PSの種類やDHAの結合している分子形)を探索する。また、ヒト培養細胞の系についても同様の検討を行い、ヒトへの応用の可能性を検討する。現在、培養細胞の飼育条件は整ったものの、脂質分子を添加した比較すべき実験系が確立しておらず、これを急ぎ改善する予定である。 2) キャノーラ油の有害作用はSHRSPの寿命短縮関連以外にも多くの報告がある。これらに対しても、FHCOにより病態改善作用を示す可能性が考えられる。本実験では、そのうち以下の3点について検討を行う計画をしている。1. 雌性SHRSPに対する出産数の減少、2. 雄性SHRSPに対する血中ステロイドホルモン量の変化、3. ICRマウスにおける異常行動。これらのうち、2.については動物実験は終わって、サンプルを測定途中であるが、1.3.についても引き続き検討を行う。 3) FHCOの作用がSHRSP以外の脳卒中モデル、例えば、薬剤や外科的処置により作成したモデル動物に対しても有効であるかを確認するために、今までの結果を元にFHCOを摂取させ、その条件で病態に対する予防効果を示すことができるかを検討する。 4) FHCO、又は飽和脂肪酸の過剰摂取により、下剤的な効果があることが知られているが、これを利用して、毒性物質や重金属などの急性毒性に対する解毒効果や、環境発がん物質などの長期投与により毒性を示す物質の吸収率などを調べ、解毒剤としての可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
昨年度の使用額が変更された主な原因は、投稿論文の作成が予定よりも進まなかったため、人件費・謝金を使用していないことと、冷却遠心機の修繕に伴い、その他の費用がかさんだため、実験計画の見直しを余儀なくされたためである。そのため、残額で主に研究発表に力を注いでいきたい。
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Research Products
(3 results)