2016 Fiscal Year Research-status Report
異文化理解を育むハラール食対応のための食育プログラムの推進
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16K00819
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
岸本 妙子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (80249375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平松 智子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (00554073)
田淵 真愉美 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (60389020)
我如古 菜月 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (70508788)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 異文化理解 / 食育授業 / ハラール食対応 / グローバル化教育 / 教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
ハラール食に関する食育教材とその中で使用する2種類の献立を用いたワークシートを作成し、栄養学科2年次生(43名)対象の「調理学実習Ⅱ」においてグループワークによる食育授業(1コマ、90分)を実施した。食育教材の内容理解度調査の結果は、食材よりも調味料に不正解が多かった。食材については正解率が90%以上だったのに対し、醤油・味噌・酢・味醂については84%、ハラール食品を取り扱う際の調理行動については67%であった。ハラール食に対応する際、豚肉やアルコールが禁忌であることは理解したが、調味料については製造過程でアルコールや油脂が使われていることを知らない者が多かった。 共通教育科目「食糧を考える」において外部講師による「日本の地方社会のムスリム食事情とハラール食品ビジネスの二極化」と題した特別授業(1コマ、90分)を実施し、栄養学科生20名及び栄養学科以外の学科生48名が受講した。次に、専門科目である「調理学実習Ⅱ」受講生における「食糧を考える」特別授業を受講したものとしていないものとの比較から、共通教育と専門教育の連携によりハラール食について認知度が高くなることは示されたが、特別授業受講の有無で食育教材の内容理解度に有意差は見られなかった。したがって、共通教育でハラール食品に関する特別授業を一度受けても、専門教育での食育教材の内容理解度の向上には必ずしも結びつかず、継続的な複数回の食育を実施していくことが必要であることが示された。 今後の在日イスラム教徒対応を想定して、インドネシア共和国のハサヌディン大学医学部附属病院等においてハラール食対応に関する調理法及び食品保管等についての聞き取り調査を実施し、食品表示やハラール認証表示などについて調査した。グローバル化が進む中で、わが国においてハラール食対応を含む異文化理解を育む食育プログラムにおける課題を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グローバル社会に対応できる異文化理解の進んだ管理栄養士を養成するための教育プログラムを開発し、共通教育科目での異文化理解についての学びと学部教育における専門科目を連携させることによる効果を検証することを目的として、ハラール食に関する食育教材とその中で使用する2種類の献立を用いたワークシートを作成して改良し、栄養学科の学生を対象に「調理学実習Ⅱ」においてグループワークによる食育授業を実施することができた。さらに、共通教育科目「食糧を考える」において外部講師による「日本の地方社会のムスリム食事情とハラール食品ビジネスの二極化」と題して実施した特別授業(90分)を、栄養学科学生20名及び栄養学科以外の学生48名が受講し、内容理解度を調査しハラール食品への理解をはかることができた。 在日イスラム教徒対応への食育教材としての改良を目指して、研究代表者及び研究分担者2名の計3名が、国民の90%がムスリムであるインドネシア共和国のハサヌディン大学へ出張して医学部附属病院の栄養部門・調理部門においてハラール食対応に関する調理法及び食品保管等についての聞き取り調査を実施した。わが国でのハラール食対応に参考となる多くの知見を得ることができた。これまでの取り組みから、1年次に共通教育において異文化理解に関する授業を受け、2年次に「調理学実習Ⅱ」で献立毎にハラール食対応を自ら考え、次に、3年次でのハラール対応食による喫食経験を経て、異文化や宗教上の違いへの理解を深めて互いの文化を尊重する姿勢を養い、4年間に年次ごとの食育プログラムを実施することで異文化理解において有効な成果が見込まれることが示された。一方、他学部・他学科の学生も共通教育における異文化理解に関する特別授業を履修することによって、ハラール食に対する認知度を高めて、異文化理解を深めることができることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
1年次での共通教育における食分野における異文化理解に関する特別授業、2年次での調理関連の専門教育での「調理学実習Ⅱ」に引き続き、今後は、3年次でのハラール食対応の献立作成とそれらの喫食を経験することを通して、異文化や宗教上の違いへの理解を深めて互いの文化を尊重する姿勢を養うための食育プログラムの教育効果を測りたい。さらに、グローバル化する中での病院管理栄養士の役割に関する特別授業(臨床栄養学分野)も実施して、管理栄養士養成における異文化理解を育む食育を補完することを考えている。 また、在日ムスリムを対象とする聞き取り調査において、ハラールフード対応調理ガイド(英語版及び日本語版)の改良と検討を重ねる予定である。
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Causes of Carryover |
ハラール食対応の献立をすでに提供している大学生協食堂や集団給食施設において聞き取り調査を実施するにあたり、研究代表者及び研究分担者3名の予定と先方の予定が合わず、次年度に繰り延べたため。 そのため、研究データ入力及び資料整理を一部依頼できず、研究補助の謝金を執行できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ムスリム学生の在籍者数が多く、かつハラール対応献立をすでに提供している大学生協食堂として、立命館アジア太平洋大学での立命館大学生協、早稲田大学生協等で担当者に聞き取り調査を実施する際に、国内旅費として使用する予定である。同時に、在日ムスリムを対象としてわが国での食生活に関するさまざまな課題についての聞き取り調査を実施する予定で、その際に国内旅費が必要となる。 収集した研究データの入力と資料整理のために、研究補助の謝金が必要となる。
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