2017 Fiscal Year Research-status Report
異文化理解を育むハラール食対応のための食育プログラムの推進
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16K00819
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
岸本 妙子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (80249375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平松 智子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (00554073)
田淵 真愉美 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (60389020)
我如古 菜月 岡山県立大学, 保健福祉学部, 助教 (70508788)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 異文化理解 / 食育授業 / ハラール食対応 / グローバル化教育 / 教育プログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
グローバル化が進むわが国で、宗教上の文化の違いや食の禁忌に対応できるように、異文化理解を育むハラール食対応のための食育プログラムの構築を図り、その効果を検証した。1年次での共通教育と2年次での専門教育の連携により、ハラール食についての認知度は高くなることは示されたが、共通教育での特別授業受講の有無で専門教育での食育教材の内容理解度の向上には必ずしも結びつかなかったことから、3年次でのハラール食対応の献立作成とそれらの喫食を経験させることを試みた。3年次の「臨床栄養学実習Ⅰ」で通常食からハラール対応食へ献立展開を学生に行わせ、実際に調理して喫食させた。さらに、4年次生にハラール対応食である和食を試食してもらい、官能評価を行ったところ、主菜・副菜2点・汁物のいずれにおいてもハラール食が通常食と変わらずおいしく食べられており、高い評価点が得られた。 今回の結果から、異文化理解に効果的なハラール食対応に向けた食育プログラムとして、1年次に異文化理解に関する特別授業を講義形式で行い、2年次に食育授業を演習形式で行い、3年次に実習形式でハラール対応食を実際に献立展開し、調理し、喫食するという形で、継続して複数回の授業実施が必要であることが示唆された。 これらとは別に、ハラールメニューを提供している大学生協の例として、早稲田大学高等研究所(イスラム研究機構)関係者及び早稲田大学生協担当者に聞き取り調査を行い、さらに岡山県総社市在住のムスリムである岡山県立大学大学院生のムスリム留学生2名を対象にハラール対応の和食の試食を行い、ムスリムの集住地域ではない総社市での居住経験から、食品の英文表記、お祈りのスペース、ハラール認証食品の入手などに関する聞き取り調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、国内市場でもムスリムのインバウンド需要が増大していくと考えられる。そこでわが国の大都市以外の地域で、日本のハラール食対応の現状について在住ムスリムがどう考えていて、どう対応しているのかを知り、それを踏まえた上で、より効果的な食育プログラムを構築していくための工夫に時間を取られている。学生たちが将来、食の専門職である管理栄養士として、ハラール食への関心をもち、知識を定着させ、管理栄養士として病院や施設などでムスリムの方に対処する必要があるときに、適切な対応ができる能力を身に付けることを目標とした食育プログラムとするために、ムスリム個人によって戒律への対応方法が異なること、食サービスを提供する側が情報提供と情報開示を行うことで信頼関係を築く必要があること、日本人には難しいとか理解できないとかいった既存の固定観念を変えること等を盛り込むために苦心している。 今年度、2年次生への食育授業では39名を対象にワークシートを用いてグループワークを行い、授業後アンケートを実施し、これまでの結果との比較を行った。一方、4年次生と在住ムスリム2名を含む32名を対象に、3年次生が献立展開したハラール対応の和食の試食及び官能評価を実施したが、研究成果の公表がまだできておらず、研究論文としての取りまとめに手間取っている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作成した「ハラールフード対応調理ガイド」(英語版及び日本語版)をもとにして、2年次生対象の食育授業で用いるパワーポイントの改良や献立内容を用いたワークシートを作成しているが、大学4年間を通しての食育プログラムをより効果的にするとともに、学生たちが卒業後にハラール食対応が必要になった際にはいつでも本プログラムにアプローチできる体制作りを考えている。今後、在日ムスリムや訪日ムスリムの実情や居住・滞在場所は多種多様となることが予想されることから、現状の在日ムスリムを対象とした聞き取り調査結果をもとに、食育プログラムに関する資料の作成だけでなく、食生活における異文化理解を進めるために改善すべき課題を模索していきたい。 これらのなかでも次年度は、講義形式の異文化理解に関する特別授業の教育効果に対する評価方法の改良、及び2年次に食育授業で用いるパワーポイントのまとめ方やワークシートに用いる献立内容について改良したい。
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Causes of Carryover |
(理由) 3月に予定していた海外調査(インドネシア調査)を止むを得ない事情で取りやめ、また、国内調査は早稲田大学生協のみで、日程の都合で日帰り調査となり、詳しい調査は次年度に繰り延べたため。 (使用計画) ムスリム学生の在籍者数が多くかつすでに数年にわたってハラール対応献立を提供している大学生協食堂のうち、聞き取り調査を依頼していた立命館アジア太平洋大学の立命館大学生協、早稲田大学生協(再度の調査)などで担当者に聞き取り調査を実施する際に、国内旅費として使用する予定である。
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Remarks |
OPUフォーラム2017要旨集 「グローバル社会に対応できるハラール食対応のための食育プログラムの開発」岡山県立大学保健福祉学部栄養学科 岸本妙子・平松智子・新田陽子・田淵真愉美・我如古菜月・川上貴代・久保田恵・井上里加子・森分咲良 2017年5月29日岡山県立大学
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