2017 Fiscal Year Research-status Report
卵白の熱凝固で構築されるゲル様食品の微細構造やレオロジー特性に及ぼす卵黄の影響
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16K00821
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
杉山 寿美 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (10300419)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野村 知未 広島女学院大学, 人間生活学部, 講師 (90735945)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 卵 / レオロジー / プデイング / フライ / パン |
Outline of Annual Research Achievements |
卵は,卵黄LDLが有する乳化特性と卵白たんぱく質が有する熱凝固特性から,その配合は多くの食品の調理加工過程での構造構築に影響する。29 年度は,28年度に引き続きカスタードプディングの構造構築への影響を検討するとともに,加熱時に内部からの圧力で膨化し多孔質構造となるパンおよび揚げ物の衣の構造構築へ卵黄の影響を検討した。すなわち,動的粘弾性測定,走査電子顕微鏡観察,体積測定,テクスチャー測定,官能評価等を行った。以下,パンでの結果を報告する。パン生地の動的粘弾性測定の結果,全卵または卵黄を含む生地のG’および |η*|は50℃付近から低下,70℃付近から急激な上昇を示し,また,全卵を含む生地の40℃,60℃での線形領域が狭かった。この加熱過程におけるレオロジー挙動から,卵黄の存在が卵白たんぱく質の熱凝固を抑制,でんぷんの糊化開始温度を上昇,糊化時間を短縮させていることが示唆された。また,卵白を配合したパンと比較して,全卵,卵黄,レシチンを配合したパンの体積,比容積は大きく,SEM観察から,卵白を配合したパンでは,グルテンがでんぷん粒の周囲を密に取り囲み,CO2によって形成された空隙が小さく厚みのある膜で形成されている一方,卵黄やレシチンを配合したパンではでんぷん粒の周囲に空隙を有し,CO2によって形成された空隙は大きく薄い膜で形成されていることが確認された。官能評価においても,卵白を配合したパンは硬く,ふわふわ感に欠けると評価された。以上の結果から,卵白たんぱく質の熱凝固性が加熱時のCO2による体積増加を小さくするものの,卵黄成分(レシチン等)がグルテンやでんぷん粒子表面に存在することで,生地中の水分移行を変化させ,卵白たんぱく質の熱凝固を抑制するとともに,小麦でんぷんの糊化を遅延させ,ドウの進展性とCO2の移動性を確保し,加熱後のパンの性状に影響していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「卵白タンパク質の熱凝固による構造構築」「卵黄の構造構築への影響」「構築された構造のテクスチャー」を明らかとすることを目的としている。 29年度は、カスタードプデイング、フライ、パンを試料として、加熱によるゲル形成機構における卵黄の熱凝固の影響を検討し、「研究実績の概要」に記述したように、多くの結果を得ており、おおむねに進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は、当初の予定通り、カスタードプディング等を試料とした実験を行うとともに、28,29年度に得られた結果を補足し、論文発表の準備をすすめる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:29年度の繰越額は22,665円であるが,謝金の支払いがなかったためである。 使用計画:30年度は学生に研究補助を依頼する予定であり,29年度繰越金も含め謝金として使用する。
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