2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K00826
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
田村 倫子 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (60451845)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Zygosaccharomyces mellis / 糖耐性 / RNA-Seq / トランスクリプトーム解析 / タンパク質発現ベクター / 浸透圧耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、蜂蜜から分離した酵母Zygosaccharomyces mellisの耐糖メカニズムの解明を目的としている。Z. mellisは蜂蜜やシラップに生育可能な非常に高い耐糖能力を有する。そこで、糖に特化した浸透圧耐性メカニズムを明らかにするため、本年度(3年目)はZ. mellis のRNA-Seqをおこない、①高糖度培地で発現量が有意に変化した遺伝子をスクリーニングするとともに、②スクリーニングにより得られた遺伝子群が微生物の糖耐性能獲得に関与するかを検証するために用いるプラスミドを構築した。 ①の遺伝子のスクリーニングにおいては、2年目の検証結果を参考に、グルコース50%含有培地3本とグルコース1%含有培地3本とでZ. mellisを生育させ、RNAを各3サンプルずつ用意し、もう一度RNA-Seqに供した。遺伝子のスクリーニングは、前回のスクリーニング条件に加えて、これまでに培った作物遺伝子スクリーニングの際の条件も用いた。その結果、グルコース50%含有培地において、有意に発現量が増加した遺伝子を47遺伝子、有意に低下した遺伝子を13遺伝子抽出した。この中にはプロトンポンプ、細胞壁合成関連酵素、糖代謝、各種転写調節因子をコードする遺伝子が含まれた。 ②のプラスミドの構築においては、タンパク質発現用のプラスミドを準備した。高い糖耐性を有さず、ウラシル合成能が欠損したS. cerevisiaeへの導入を考えている。プラスミドには、挿入した遺伝子によりコードされたタンパク質のC末端に、取り外し可能なFlagタグを配置した。また、タンパク質を高発現させるプロモータも組み込んだ。このプロモーターも付け外し可能となるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標の1つは、糖濃度の異なる培地で培養したZ. mellisの遺伝子発現変動を比較するために、新たな手法でRNA-Seqをやり直し、発現量が変動した遺伝子をスクリーニングしなおす事であった。前回の解析にあたり(1)シークエンスエラーによる偽遺伝子の抽出割合を下げること、(2)シークエンス解読時の遺伝子の発現量が、RT-PCRを用いた発現量とほぼ一致すること、(3)トランスクリプトーム解析により抽出された遺伝子群のannotationを正確に付与すること、の3点が課題となった。 (1)においては、(3)によるannotation の付与を丁寧に行うことで正確なアノテーションが得られたと仮定した場合、抽出された遺伝子に複数の既存の浸透圧耐性遺伝子が含まれていたため、達成されたと考えられた。 (2)においては現在実験を進めている所である。 以上より実験はおおむね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
高糖濃度下で有意に発現量が変動すると考えられた遺伝子群のうち、まずは発現量が有意に増加した遺伝子群を対象とする。発現量が有意に増加した各遺伝子を、S. cerevisiaeに形質転換することで、S. cerevisiaeが60%グルコース含有培地に生育可能か検証する。具体的には、Z. mellisの遺伝子Xを有するプラスミドを、ウラシル要求性BY4741株に導入し、BY4741株が60%グルコース培地に生育できるか検証する。 この一方で、Z. mellisの近縁種である Z. rouxiiやS. cerevisiaeとの比較ゲノム解析も可能であれば行いたい。今回アノテーションを付与する過程で、1990年代は同種とされていたZ. rouxiiとの相同性が、数十%の割合で低いことが確認された。加えて、Z. mellisがシラップや蜂蜜に生息する一方でZ. rouxiiはしょう油や味噌といった塩濃度の高い食品に生育することも考慮すると、高浸透圧耐性微生物における、糖耐性と塩耐性のメカニズムの違いに迫れるのではないかと考えられる。
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Causes of Carryover |
昨年度の実験の進行を律速するRNA-Seqに、時間を要してしまった。このため、本来行うはずであったスクリーニングされた遺伝子のRT-PCRや、酵母への形質転換実験ができなかったため。 従って、今年度は上記の実験から行いたいと考えている。具体的にはRT-PCRに必要な試薬、RNA抽出キット、ウラシル欠損固形培地作製費などにあてる。
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