2017 Fiscal Year Research-status Report
味覚受容体による味シグナル入力と脳での味知覚出力のギャップの解明
Project/Area Number |
16K00840
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
日下部 裕子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門, ユニット長 (90353937)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 味覚受容体 / 甘味料 / 唾液分泌 / 官能評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちが日常的に感じている味は、味覚受容体と味物質との結合がもたらすシグナルが味神経、大脳皮質、偏桃体などの脳神経系を介して知覚されるが、その過程で味情報は増幅・抑制等の修飾を受けていると考えられる。よって、味物質による味覚受容体の活性と官能評価を介した味の認識には乖離がある可能性が非常に高いが、そこに着目した研究は少ない。本研究では、この乖離を明らかにして、味覚受容体が受容した呈味シグナルがどのように脳まで伝達されるかを明らかにすることを目的とする。29年度は、高甘味度甘味料および糖、糖アルコールの甘味刺激による唾液分泌と官能評価による甘味強度および嗜好性、甘味受容体T1r2/T1r3の応答強度とを比較した。その結果、甘味刺激による唾液分泌は、甘味強度とT1r2/T1r3による応答強度と相関し、嗜好性とは相関性が低いことが明らかになった。このことから、味刺激が無条件反射を引き起こすことを確認した。次に、条件反射による唾液分泌を引き起こす可能性の高い香りと、味との相互作用を調べる方法を検討した。味刺激によって分泌された唾液を用いて、唾液中のストレスマーカーであるアミラーゼ活性を測定したところ、いずれも刺激後1分以内で、刺激が強く嗜好性が低い酸味ではアミラーゼ活性が高くなり、嗜好性の高い甘味ではアミラーゼ活性が低くなることを確認した。また、辛味受容チャネルを発現した細胞を用いて、複数の辛味に対する濃度応答曲線の形状を比較した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
29年度以降に予定していた、ヒトおよび実験動物を用いた味覚受容体の活性度と味覚感受性の関係の予測を予定通りに行った。また、他の感覚と味との相互作用を明らかにするために、新たに唾液中のアミラーゼ活性測定の最適化を行い、味の嗜好とアミラーゼ活性の相関を調べ、来年度の実験条件を確立したため。
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Strategy for Future Research Activity |
29年度までに行ってきた受容体分子の応答測定、官能評価に加えて、唾液中のアミラーゼ活性の変化を調べることにより、複数の味質間、複数の感覚間の相互作用を評価する。具体的には、複数の味の混合、味と香りの混合による閾値および嗜好性の変化と味覚受容体の活性との関係を明らかにする。
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Causes of Carryover |
辛味受容チャネルによる、複数の辛味物質の評価およびその相対関係の解明が、予定していたよりも少ない試行回数で予定した評価を終えたため、次年度使用額が生じた。一方、平成30年度は、唾液中のアミラーゼ測定や官能評価などのヒト実験を予定しており、当使用額を利用して被検者を増やした測定を行う予定である。
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Research Products
(2 results)