2016 Fiscal Year Research-status Report
抗酸化作用を持つ低吸収性機能性食品成分の吸収改善と効果改善に向けた製剤開発
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16K00842
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 夕紀 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (00564981)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 吸収 / 機能性食品成分 / 乳剤 / 固体分散体 / 脂溶性 / 小腸 / トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、抗酸化作用を持つ低吸収性の機能性食品成分に焦点を当て、それらの消化管における吸収機構に関する検討、さらに乳剤化などの製剤開発・トランスポータを利用した吸収改善のための検討を行うことで、吸収動態特性を考慮した吸収改善理論を確立することを目的としている。いくつか検討した物質の中のコエンザイムQ10(CoQ10)に関して、新規界面活性剤素材であるオキサ酸を用いて、乳剤を調製し、実験動物へ経口投与後血漿中濃度推移を検討したところ、既存の乳剤の例と比較して、高い吸収性が認められた。また、ルテインに関しては、吸収改善のためにいくつか製剤を調製し検討したが、血漿中濃度推移に目立った変化は認められなかった。その一方で、リンパ液を採取し、リンパ液中濃度を測定したところ、高濃度で検出された。このことから、ルテインの吸収を評価するには、リンパ液が有用であることが示唆された。 また、αトコフェロールに関して、その吸収には小腸コレステロールトランスポータNPC1L1 (Niemann-Pick C1 Like-1)が一部関与していると報告されている。このNPC1L1阻害薬として知られるエゼチミブは、コレステロールの吸収を抑制するして脂質異常症治療薬として汎用されている。トコフェロールを医薬品・サプリメントで服用している方がエゼチミブも服用している場合、トコフェロールも吸収抑制されている可能性があるが、この長期的影響等は明らかにされていない。今回、我々は、単回投与だけでなく、長期的にもエゼチミブを服用している場合、トコフェロールの吸収も抑制されていることを見出し、さらに投与間隔をあけることでその吸収抑制を回避できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請研究の初年度では、低吸収性を示す機能性食品成分の吸収改善を目標として検討を進めた。乳剤化による吸収改善や、乳剤化だけではなく、新たに固体分散体等も調製することに成功し、吸収改善が認められた。さらに、これまでは血漿中濃度などで主に吸収を評価していたが、それに加えて、リンパ液採取の手技も獲得し、リンパ液での評価(一定時間までの累積値等)も可能となったため、新たな評価指標も示すことができたため、順調に成果が得られつつある状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえて、今後もよりよい吸収改善ができるよう乳剤等の組成や構成成分に着目して検討を継続する。その際、調製した乳剤などの構成成分あるいは、製剤の安全性(障害がないかどうか)について、膜透過性などを検討して、確認する。 また、これまでに着目しているトランスポーターの一つのNPC1L1について、吸収にNPC1L1の関与が示唆されている成分があるため、NPC1L1の発現系を現在構築中である。これが作製でき次第、細胞内への取り込み実験等でNPC1L1が関与しているかどうかを明らかにする。また、αトコフェロールに関しては、NPC1L1が関与し、エゼチミブまたは活性代謝物であるエゼチミブグルクロン酸抱合体の作用点とその濃度などの関係を明らかにしていく予定である。現在、LC-MS/MSにより、エゼチミブおよび抱合体濃度の定量条件を確立しており、でき次第、組織中濃度などを検討してゆく。 さらに、得られた成果は適宜国際誌等へ投稿し、研究成果を公表してゆく。
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