2017 Fiscal Year Research-status Report
妊婦のトリプトファン代謝異常と低出生体重の関係~トリプトファン摂取の効果の解析~
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16K00858
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
佐野 光枝 滋賀県立大学, 人間文化学部, 准教授 (20524911)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トリプトファン代謝 / 子宮内胎児発育遅延 |
Outline of Annual Research Achievements |
早産を含む新生児の低出生体重が、成長後の肥満や生活習慣病、学習障害等のリスクになるとの報告があり、近年多方面で研究が進められている。研究代表者はこれまで子宮内胎児発育遅延(IUGR)のモデルラットにおいて母体のセロトニン(5-HT)の合成能力と、胎仔のナイアシン合成能力が低下していることを明らかにした。5-HTは神経伝達物質として知られているが、近年インシュリンの分泌を促進する機能をもつことが報告されている。研究代表者はこの結果から、母体のTrp摂取量や体内での代謝異常が、IUGRで生まれた子供が持つ肥満等のリスクと関連があるのではないかと考えている。そこで本研究は、IUGRで低下した母体の5-HT合成能力を適正化するためにTrpの経口摂取が有効であるかどうかを検討することを目的としている。 平成29年度は妊娠ラットに低タンパク質飼料を与える方法でIUGRのモデルラットを作成し、これにTrpを負荷することでIUGRの症状が改善するかどうかを検討した。ラットは飼料組成の違いによって4群に分けた。4群の詳細はコントロール飼料摂取群、低タンパク質飼料群、低タンパク質飼料にトリプトファンを0.1%添加した群、そして低タンパク質飼料にTrpを1%添加した群である。コントロール飼料と同じトリプトファン摂取量にしても、低タンパク質飼料を与えた群のIUGRは改善しないことが明らかになった。しかし、さらに高濃度のTrpを与えることでIUGRの改善が認められた。この改善のメカニズムを明らかにするための研究を現在進行中である。 平成29年度に実施予定であったヒトを対象とした研究(IUGRの妊婦さんの血液中5-HT濃度が低下しているかどうかを調べる研究)は、共同研究先の病院にて被験者のリクルートが実施できない事態になり、研究は遅れている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究はフランスの研究室との共同研究で実施しており、IUGRの妊婦さんの5-HT濃度が低下するかどうかを検討する研究をフランスで行う予定であった。しかし、先方で研究を手伝って下さる予定であった病院スタッフの方が産休・育児休暇に入られ、代わりのフタッフがいないことから被験者のリクルートが出来ない状態にある。現在まで、ヒトを対象とした研究が実施できていないことから、区分は(4)にした。ラットを対象とした、IUGRのモデルラットにおけるTrp負荷の症状改善効果を検討する実験は実施でき、期待どうりの結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であり、平成29年度までに得られた結果を論文にまとめられるように、まだ未解析のサンプルの解析を行う予定である。 研究開始時点での研究計画の中で、予定したにもかかわらず現時点で実施できていないヒトを対象とした研究は、本年度中に終えることは出来ないが、計画を変更して被験者のリクルートに人手を要しない形で実施しようと計画中である。
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Causes of Carryover |
研究計画よりに現在の進捗状況が遅れているために次年度使用額が生じた。
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