2018 Fiscal Year Research-status Report
穀類の摂取による高血圧症の予防効果と腸内代謝を介したメカニズムの研究
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16K00867
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
青江 誠一郎 大妻女子大学, 家政学部, 教授 (90365049)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | β-グルカン / 大麦 / 高血圧 / 短鎖脂肪酸 / アンジオテンシノーゲン / アンジオテンシンⅡ |
Outline of Annual Research Achievements |
β-グルカン含量の異なる2系統の大麦(ホワイトファイバーとファイバースノウ)を食餌性肥満モデルマウスに給餌し、血圧に及ぼす影響を検討した。本実験の対照群の収縮期血圧が120.7±8.2mmHgであったことから食餌性高血圧が発症したと考えられた。それに対し、ホワイトファイバーでは有意に血圧を低下させる作用が示された。収縮期血圧では、ファイバースノウも低下傾向(p=0.05)であったことから両大麦ともに高血圧予防または改善作用があると考えられ、β-グルカン量が多いほど効果が顕著であることが示された。 大麦の血圧低下作用のメカニズムを調べるため、血清アンジオテンシンⅡ濃度とACE活性を調べたが、有意差が認められなかった。したがって、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系による調節作用ではないことが示された。同様に、内臓脂肪蓄積低減に伴う、脂肪組織からのアンジオテンシノーゲンの発現量低下によるメカニズムも認められず、逆に発現量が高まることが示された。また、交感神経系を介したレプチンの血圧上昇促進作用が報告されている。本結果より、ホワイトファイバー群で血清レプチンが有意に低かったため、血清レプチン低下が血圧低下の要因と考えたが、血圧と血清レプチン濃度との間に相関性は認められなかった。したがって、レプチン濃度でも説明ができなかった。 一方、盲腸重量と血圧との有意な負の相関が認められたため、短鎖脂肪酸を介した血圧調節が考えられた。大麦の血圧低下作用は、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を介さない、短鎖脂肪酸を介した作用の可能性が示唆された。今後、盲腸内短鎖脂肪酸解析を行い、血圧との相関性を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、食餌性高血圧モデルマウスの構築と食餌因子の探索に注力し、後半ではメカニズムの解明を目標として実験計画を立てた。高血圧モデルマウスとして、ヒトのレニンおよびアンジオテンシノーゲンを導入したトランスジェニックマウス(つくば高血圧マウス)が報告されており、収縮期血圧が、129.1±7.1mmHgであり、正常マウスでは100.4±4.4mmHgであったことが報告されている。今回、構築したマウスの対照群の収縮期血圧が120.7±8.2mmHgであったことから、我々のモデルマウスが食餌性高血圧を発症することを早期に発見できた。その後、種々の穀物で血圧降下作用を探索していく予定であったが、β-グルカン高含有大麦で顕著な効果が見られたことから、そのメカニズム解明に集中することができた。その結果、短鎖脂肪酸を認識する嗅覚受容体Olfr78やGPR41を介した血圧調節メカニズムの研究へと発展し、最終年度に最終的な証明実験に着手できる。
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Strategy for Future Research Activity |
GLP-1が心房に局在するGLP-1受容体に作用し、心房の心筋細胞のcAMPを増加させ、Epac2 (exchange protein directly activated by cAMP)の形質膜移行を促進し、心房性ナトリウム利尿ペプチドの分泌を促すというメカニズムを仮説として立てた。短鎖脂肪酸は、L細胞を活性化させ、GLP-1分泌を促進することもこれまでの研究で明らかにしている。したがって、大麦の血圧低下作用は、レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を介さない、短鎖脂肪酸を介した作用の可能性を解明する。さらに、盲腸内短鎖脂肪酸解析を行い、血圧との相関性を検討していく。また、当初予定にあったその他の食物繊維給源をもちいた評価も並行して実施し、大麦β-グルカンが特異的であるか、全粒穀物が共通して有する機能であるのかについても結論を出したい。
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