2018 Fiscal Year Research-status Report
肝星細胞におけるビタミンA取り込み関連因子のスクリーニング
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16K00872
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
目崎 喜弘 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (40431621)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 知和 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (30199749)
岩本 武夫 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (90568891)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ビタミンA / 星細胞 / 肝臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホッキョクグマは肝星細胞に大量のビタミンAを蓄えているが、そのことを可能にする分子メカニズムは不明である。そこで我々は、肝臓においてレチノールをレチニルエステルに変換する酵素であるレシチン:レチノールアシル基転移酵素(LRAT)の解析を行った。その結果、意外なことにホッキョクグマ肝臓のLRAT活性は、ヒトやラット肝臓のLRAT活性と比べて低値であった。また、LRATと細胞内レチノール結合タンパク質I(CRBP-I)が強く共局在することが明らかとなった。CRBP-Iに結合したレチノールは分解から保護され、LRATの良い基質となることが知られている。したがって、ホッキョクグマの肝臓では、CRBP-Iがレチノールを効率的にLRATに運ぶことで、弱いLRAT活性を克服し、ビタミンAの大量貯蔵を実現しているのではないかと考えられた。さらに、ホッキョクグマ肝星細胞のビタミンA脂質滴は巨大であり(通常ひとつの細胞に1個)、ラットやマウスにビタミンAを投与したときに形成されるビタミンA脂質滴(中程度の大きさの脂質滴がひとつの細胞に数個)とは異なっていた。肝星細胞にビタミンA脂質滴が形成される際、PATタンパク質(perilipin、ADRPおよびTIP47の総称)と呼ばれる膜タンパク質が必要なことが知られている。ひとつの細胞に含まれるすべての脂質滴の体積に対する表面積の比は、単一の脂質滴が存在するときに最小になることから、ホッキョクグマの肝星細胞は、最小限のPATタンパク質で一定量のビタミンA脂質滴を形成する能力を備えているといえる。単純な食物連鎖で生態系を維持している北極圏において、ホッキョクグマはその頂点に位置する。食物連鎖により濃縮しがちなビタミンAを効率的にエステル化して貯蔵する能力を獲得することで、そのような地位を獲得したのであろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホッキョクグマがなぜ肝臓に大量のビタミンAを貯蔵できるのかについて、その分子メカニズムの一端を示唆する結果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き肝星細胞における新規ビタミンA取り込み関連因子のスクリーニングを行うとともに、肝星細胞におけるレチノイン酸受容体と細胞小器官の共局在を解析することで、肝星細胞におけるビタミンA取り込み・貯蔵メカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
2018年度に、レシチン:レチノールアシル基転移酵素(LRAT)の生化学的な分析を行い、その結果を基に肝星細胞におけるビタミンA取り込み機構を考察するとともに学会発表する予定であったが、生化学分析の結果が安定しなかったため、計画を変更し肝星細胞におけるレチノイン酸受容体(RAR)の解析を行うこととした。このため、RARの解析と学会発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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Research Products
(5 results)