2016 Fiscal Year Research-status Report
鉄欠乏時の骨代謝変動に及ぼす因子の検索とメカニズムの解明
Project/Area Number |
16K00873
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
勝間田 真一 東京農業大学, 応用生物科学部, 准教授 (10424681)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 鉄欠乏 / 骨代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、鉄欠乏時の骨量減少に及ぼす要因について、骨代謝関連遺伝子の変動により検討した。被験動物として3週齢Wistar系雄ラットを用い、正常食または鉄欠乏食を投与し4週間の飼育観察を行った。鉄欠乏食投与により明らかな貧血症状を示し、大腿骨の骨塩量と骨密度は有意に低下した。骨代謝マーカーの結果より骨形成の低下が観察された。また、骨形成関連遺伝子(Runx2、Osterix、OPN、OCN、Col1a1)の鉄欠乏食投与による発現の低下が観察され、同時に、大腿骨中IGF-ⅠとBMP2 mRNA発現量の低下もみられた。これらのことから、鉄欠乏食投与による骨形成の低下はIGF-ⅠとBMP2の遺伝子発現量低下により骨形成関連遺伝子の低下が引き起こされた結果であることが示唆された。一方、骨吸収マーカーである尿中DPD排泄量は鉄欠乏食投与により有意に低値を示したことから、鉄欠乏時の骨吸収の低下が観察されたが、大腿骨中の骨吸収関連遺伝子であるTRAPの発現低下が観察されたため、鉄欠乏時には破骨細胞の活性が低下することが示唆された。 さらに、鉄欠乏食投与ラットへの2週間の正常食投与を行ったところ、貧血症状は完全には改善されなかった。しかし、活性型ビタミンD、骨形成マーカー、骨吸収マーカーは回復し、大腿骨骨密度も回復傾向がみられた。大腿骨中OCN、Col1a1、IGF-Ⅰ、BMP2の遺伝子発現観察を行ったところ、これら遺伝子発現量の回復もみられたため、鉄欠乏状態が完全回復しなくても、骨代謝の回復がみられることが示唆された。また、鉄欠乏により低下した血清中総タンパク質濃度の改善もみられたことから、鉄欠乏がタンパク質代謝にも影響を及ぼしていることも示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、骨代謝に関わる遺伝子発現の検討から新たな知見が得られた。また、タンパク質代謝の変動を示唆する結果も得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度も計画通りに研究を進めていく。また、昨年度の臓器サンプルも保存してあるため、そのサンプルを用いて鉄欠乏による新たな骨代謝変動要因の検討も行う予定である。
|
Causes of Carryover |
当初の計画よりも順調に実験が進み、効率的な予算執行ができたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度に保存しておいたサンプルを用いて追加の解析を行うため、初年度未使用額をその費用として充てる予定である。
|