2017 Fiscal Year Research-status Report
シイタケフレーバー前駆体による高嗜好性・高機能性食品の創製
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16K00874
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
熊谷 日登美 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20225220)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | シイタケフレーバー前駆体 / レンチニン酸 / 原木栽培 / 菌床栽培 / 加熱調理法 |
Outline of Annual Research Achievements |
シイタケ(Lentinula edodes)の特徴的なフレーバーは,フレーバー前駆体であるレンチニン酸(LA)に,酵素γ-グルタミルトランスフェラーゼとC-Sリアーゼが作用して,デスグルタミルレンチニン酸(DGLA)を経て生成するレンチオニン等の環状硫黄化合物である。一方,ニンニクの特徴的なフレーバーは,フレーバー前駆体であるS-allyl-L-cysteine sulfoxide (ACSO)に,酵素C-Sリアーゼが作用して生成するスルフィド類である。当研究室では,経口摂取したACSOが,生体内で代謝活性化し,様々な生理作用を示すことを既に明らかにしている。シイタケのフレーバー前駆体であるLAおよびDGLAは,ACSOと構造が類似していることから,これらも,ACSOと同様の生理活性を有することが期待できる。 平成28年度は,シイタケ抽出物中のアミノ基を有する化合物をFmoc誘導体化し,その蛍光強度をHPLCにより測定することにより,LAおよびDGLAの検出を行った。平成29年度は,シイタケ中のLA含量を定量するため,クロマトグラフィーにより精製を行い,単離したLAを用いて検量線を作成した。そして,シイタケの品種,栽培方法,加工方法の違いにより,LA含量がどの程度異なるか検討した。その結果,菌床栽培のシイタケは原木栽培のシイタケよりもLA含量が多いことが明らかとなった。また,原木栽培により得られた品種の異なるシイタケ4種間でもLA含量は異なり,最大5倍ほどの違いが認められた。加熱法の違いでは,電子レンジ加熱で最もLA残存量が多く,次いで,茹で加熱,蒸し加熱の順であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シイタケ抽出物から,カラムクロマトグラフィーおよびHPLCで約200回の分取を行うことにより,フレーバー前駆体であるレンチニン酸(LA)の精製を行い,単離されたLAを用いて検量線を作成した。今後の動物実験において,よりLA含量の高いシイタケを用いて試料を作製するため,栽培方法,品種,加熱加工法の違いいよるLA含量の比較を行った。その結果,LA含量は,栽培方法,品種,加工法の違いにより,最大5倍もの違いがみられた。この結果から,どのシイタケを用いて,どのように加熱加工をすればLAが高濃度に保てるか分かったので,本年度は,LAを高含有するシイタケ抽出物を調製し,LAの機能性を動物実験により評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
レンチニン酸(LA)を高含有するシイタケの品種・栽培方法,および,シイタケ中の酵素を失活させ,LAの分解を抑制する加熱加工法が明らかとなったので,本年度は,LAを高含有するシイタケ抽出物および酵素を作用させることによりLAを分解させたシイタケ抽出物を調製し,これらを実験動物に投与することにより,その生理活性を比較する。まずは,ニンニクフレーバー前駆体であるS-allyl-L-cysteine sulfoxide (ACSO)で効果が明かとなっている血中アルコール濃度上昇抑制作用を調べ,効果が高かった場合には,肝臓中のアルコールおよびアルデヒド代謝酵素の活性,並びに,胃および小腸からのアルコール吸収量の測定を行う。これにより,LAの作用機序を明らかにする。さらに,四塩化炭素誘発肝障害抑制作用,第二相解毒酵素抑制作用等についても,検討を行う。
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