2016 Fiscal Year Research-status Report
FABP5によるクロマチン構造制御を介した遺伝子発現調節機構の解析
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16K00888
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
安達 泰弘 産業医科大学, 医学部, 講師 (10346546)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 春樹 産業医科大学, 医学部, 助教 (60208626)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | FABP / 脂肪酸結合蛋白 / Hmgn1 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪酸結合タンパク(FABP)は、水に不溶な脂肪酸と結合することで可溶化するキャリア分子であり、また重要な情報伝達分子でもある。一般的に、遺伝子の転写は細胞内情報伝達系のみならず、HMGN分子ファミリーをはじめ多くの分子による染色体の立体構造制御を介して調節され得ることが知られている。 これまでにFABP5の発現が報告されている臓器においてはFABP5-KOによりHmgn1遺伝子発現が消失していた。この結果から、Hmgn1遺伝子発現はFABP5が関与する情報伝達系の下流に位置し、正に制御されている可能性が示唆された。一方、FABP5を発現していない細胞系ではHmgn1は構成的に発現すると考えられたため、対照実験としてFABP5を発現していない肝細胞で発現を比較したところ、予想に反しHmgn1発現は消失していた。文献では肝細胞でのHmgn1発現が報告されていることから、KO個体におけるHmgn1発現消失は全身性、即ち遺伝子変異の結果である可能性が示唆された。加えて、野生型との交配により再選別したFABP5-KO個体ではHmgn1発現が検出されたこと、大まかにではあるがKO個体のHmgn1遺伝子座の解析を行ったところ、5’及び3’側に異常がある可能性が示唆されたことから、現段階では、このHmgn1発現消失は遺伝子変異によるものであると結論づけた。 次に、再選別したFABP5-KO個体でHmgn1遺伝子発現が変動している可能性を検討した結果、当初の結果とは逆に野生型個体に比して約2倍に増加していることが判明した。この結果は、Hmgn1遺伝子はFABP5が関与する情報伝達系の下流に位置する新たな標的遺伝子である可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
上記の通り、先に得られていたデータの検証と再解析に時間を要したこと、また長期間に渡る実験動物飼養施設の工事で発生した騒音・振動が原因と思われる産仔数の減少と喰殺の多発により、実験に必要なKOマウスの確保が困難であったため。
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Strategy for Future Research Activity |
データ再解析により当初得ていた結果と内容が逆転したが、検討する項目・内容はほぼ変わらないため、計画内容に沿う形でレポーター実験、クロマチン免疫沈降実験、ゲルシフト実験等を実施し、Hmgn1遺伝子の発現制御メカニズムの解析を行うこととする。これらの実験は再現性が重要であるため、初代培養細胞に加えて細胞株の使用も考慮する。
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Causes of Carryover |
本実験計画申請時に取得していたデータの確認・再解析に時間を要したことと、実験動物飼養施設の長期間に渡る工事で生じた騒音・振動によると考えられる産仔数の低下と喰殺が多発したことにより、実験に最低限必要な数の遺伝子改変マウスを得ることが困難であったため、計画遂行に遅れが生じた。このため、予定していたクロマチン免疫沈降実験に着手できておらず、購入・使用予定であった超音波破砕装置一式は未導入であり、多額の次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ再解析によって当初得ていた結果と内容が逆転したが、検討する項目・内容はほぼ変わらないため、計画内容に沿う形で組織学的解析、レポーター実験、クロマチン免疫沈降実験、ゲルシフト実験等を実施し、Hmgn1遺伝子の発現制御メカニズムの解析を行うこととする。これらの実験は再現性が特に重要であるため、初代培養細胞に加えて細胞株の使用を考慮する。また、平成28年度に導入予定であった超音波破砕装置一式は、早期に次年度使用額で購入する予定である。
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