2018 Fiscal Year Research-status Report
新規機能性脂質によるメタボリックシンドローム予防に関する研究
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16K00890
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Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
柳田 晃良 西九州大学, 健康栄養学部, 客員教授 (00093980)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リン脂質 / EPA / 機能性脂質 / 認知症 / メタボリックシンドローム / 脂質代謝 / 酸化的ストレス / アミロイドβ |
Outline of Annual Research Achievements |
食品油脂成分は構造や構成脂肪酸により生体内での利用率や生理機能は異なる。前年度までの研究において、リン脂質はトリグリセリドに比べてメタボリックシンドロームや非アルコール性脂肪肝の改善作用が高く、さらに脳機能障害の改善作用を持つ可能性を報告した。しかし、EPA含有脂質の生理機能に関する総合的な研究は少ない。 本研究では、はじめにリン脂質に結合しEPAのメタボリックシンドロームやアルツハイマー病など疾患に及ぼす影響を検討した。高脂肪食(HF食)で栄養ストレスを与えた認知症モデルマウスSAMP8に対するEPA-ホスファチジルコリン(EPA-PC)添加食が記憶や行動に及ぼす影響を検討した。その結果、空間認知機能や記憶はEPA―PCで改善し、その機序として脳・海馬のアミロイドβ42およびアミロイド前駆タンパク質量の低下が観察された。さらに、SOD、GSH、MDA、NO、NOSやIL-1bおよびTNFα遺伝子発現やタンパク量に影響することから、酸化ストレスや炎症の予防作用が関与することを示した。また、EPA―PCの効果はDHA―PCに比べて同等か、いくらか弱い傾向を示した。 次に、EPA型リン脂質とEPAエチルエステルのパーキンソン病への影響を比較検討した。その結果、EPA―PL食は強い行動不全の改善作用が認められた。その機序として、酸化的ストレスとアポトーシスの抑制によりミトコンドリアを介した経路でドーパミン依存性ニューロン機能障害の改善作用が示唆された。EPA-EEの効果は限定的であった。 したがって、EPA含有リン脂質はメタボリックシンドロームの改善作用のみならず、神経変性疾患(アルツハイマー病やパーキンソン病)の予防効果を示し、機能性食品やサプリメントとして応用できる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究の進捗は、当初の予定通りには進まなかった。その理由として、研究期間中に病気加療する時間が必要となり十分な研究時間の確保ができず、当初の計画通りに進捗できなかったことがある。しかしながら、研究期間中にデータをまとめ数編の論文を報告することはできた。現在、研究条件は整ったことから本年度の研究計画に沿って研究を順調に進めることができるものと考えている
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Strategy for Future Research Activity |
脂質構造や構成脂肪酸の組み合わせによって、新規の栄養生理機能を持つ機能性脂質(脂質構造異性体) を創製するとの着想を得た。そこで、本研究は新規機能性脂質を天然資源から検索・単離し、活性成分を組み合わせた構造脂質のメタボなど生活習慣病や神経変性疾患の予防・改善機能について総合的解析を行うことを目的とする。 調製した構造脂質の生活習慣病予防・改善機能についてin vitro 実験系で評価を行う。高脂血症への影響はヒト肝臓細胞における脂質の合成と培地中への分泌を指標とし、糖尿病への影響はインスリン抵抗性発症との関与が指摘されている脂肪細胞アディポネクチンおよび小腸骨格筋インクレチンへの影響を指標とする。続いて、病態モデル動物を用いて評価を行う。動脈硬化についてはヒトに類似の進展した動脈硬化病変を発症するアポ E 欠損マウスを用い、高脂血症および糖尿病については食欲抑制因子であるコレシストキニンの受容体欠損により過食を生じ肥満・高脂血症・糖尿病を発症する OLETF ラットを用いて生理機能を評価する。さらに、老化促進マウスSAMP8を用いて認知症に対する作用を検討する。本研究は、生活習慣病に対する改善機能のスクリーニングにおいて、個体からスケールダウンした各病態モデルin vitro 実験系を用いることにより、各脂質構造体の生理作用の解析が効率よく行われるという特徴を持つ。また生活習慣病の発症には遺伝的並びに環境的因子が複合して作用することから、設定した各病態に対する分子マーカーが適切であることをin vivo 実験系で証明することにより、生活習慣病や脳機能障害の予防・改善に対する食環境の評価が容易に行える独創的な実験系の構築が期待される
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Causes of Carryover |
差額が生じた理由は、期間中に病気加療の必要が生じて研究活動に支障が生じ、計画通りに進まず使用額は少なくなったことによる。 昨年度に行う予定であった一部の研究、特にメタボと脳機能障害を改善する構造油脂に関する基礎的・応用的研究を本年度行うために使用する予定である。
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Research Products
(9 results)