2017 Fiscal Year Research-status Report
食品由来フィトケミカルによるヒストン修飾制御を介した細胞機能調節機構の総括的解析
Project/Area Number |
16K00895
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Research Institution | Shokei Junior College |
Principal Investigator |
菊池 秀彦 尚絅大学短期大学部, その他部局等, 教授 (10301384)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | フィトケミカル / 活性酸素 / ヒストンアセチル化 / エピジェネティクス / レスベラトロール |
Outline of Annual Research Achievements |
植物が生産するフィトケミカルは多彩な生物活性を有し、食品機能の観点からも大きな注目を集めている。本年度は、フィトケミカルのうち特にスチルベノイド類を中心に、ヒト白血球活性酸素(スーパーオキシド)産生能に影響を及ぼす化合物のスクリーニング及びその作用機作の解析を行った。実験系としては、ヒト単芽球様株細胞U937のin vitro分化誘導系(誘導剤としてレチノイン酸を使用)を用いた。 その結果、レスベラトロールに非常に強い白血球活性酸素産生増強効果があることを見いだした。この他、ピノスチルベン、グネトール、ピセアタンノール及びラポンチゲニンに活性酸素産生増強効果を認めた。 レスベラトロールの白血球活性酸素産生増強作用の分子機構を解明するため、RT-PCR解析を行った。その結果、白血球活性酸素産生系を構成するタンパク質因子のうち、gp91-phoxの転写量が劇的に増加していることが判明した。イムノブロット解析の結果、当該タンパク質量も増えていることが明らかとなった。また、ChIPアッセイの結果、レスベラトロールで処理した細胞では、gp91-phox遺伝子のプロモーター領域でヒストンH3の9番目及び14番目のリシン残基のアセチル化が亢進していることが示された。 以上の結果より、レスベラトロールはgp91-phox遺伝子プロモーター領域周辺のヒストンH3のリシン残基をアセチル化することにより、gp91-phoxの転写を増強することが明らかとなった。本研究結果は、今年の1月にBiochemical and Biophysical Research Communications誌に掲載された(Kikuchi H. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun., 495: 1195-1200, 2018)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レスベラトロールによるヒト白血球活性酸素産生能増強効果を見いだし、その原因がgp91-phox遺伝子の転写増強によることをRT-PCR、イムノブロット解析やChIPアッセイの手法で明らかにし、今年の1月にBiochemical and Biophysical Research Communications誌で発表した(Kikuchi H. et al. Biochem. Biophys. Res. Commun., 495: 1195-1200, 2018)。 この他にも、ピノスチルベン、グネトール、ピセアタンノール及びラポンチゲニンに活性酸素産生増強効果を認めるなど、新しい知見を得ることができた。 現在もヒト白血球活性酸素産生能に影響を及ぼすフィトケミカルのスクリーニングを継続して行っており、多くのデータが蓄積されつつある。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展しているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度もこれまでと同様の系を用いて、ヒト白血球活性酸素産生能に影響を及ぼすフィトケミカルのスクリーニング及びそれらの作用機作の解明を主軸とした研究を進めて行く予定である。 既に、カルコン類のスクリーニングは終了し、多くの新しい知見を得ている。現在、カルコン類によるヒト白血球活性酸素産生能修飾効果の分子機構について解析中である。さらに、今後はフラボン類やフラボノール類に対象を移して行く。 活性酸素産生能以外の細胞機能、例えば抗体産生能などに対するフィトケミカルの影響についても着手したい。
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Research Products
(4 results)