2017 Fiscal Year Research-status Report
ビタミンDの腸管吸収特性と栄養・機能性に関する研究
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16K00896
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
小竹 英一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門 食品分析研究領域, 上級研究員 (20547236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今場 司朗 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門 食品分析研究領域, 上級研究員 (20332273)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ビタミンD / 生体利用性 / 腸管吸収 / 代謝産物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトはビタミンDを食品から摂取すると、体内で吸収後に肝臓及び腎臓で活性化されて栄養機能を発揮する。ビタミンDには良く知られているD2及びD3があるが、他にD4-D7が存在する。D2はきのこ、D3は魚から摂取可能で、さらにD3は日光によってもコレステロールの前駆体を元に体内で合成可能である。しかし、福島の原発事故後、きのこ、魚は放射性物質の濃縮のリスク回避、スタチンなどのコレステロール生合成阻害薬投与あるいは皮膚がんリスクからの日光忌避によるD3生合成阻害によってビタミンD不足を起因とするロコモーティブシンドローム等が懸念される。そこでD2、D3及びD4-D7についても吸収特性や代謝を調べ、かつ申請者の有する吸収促進技術を用いて吸収向上を図ることで、ビタミンD不足の懸念に対処する。 市販品のD2、D3、D4を平成28年度に購入したが、D5、D6、D7は実質的に市販品が無く入手できなかった。そこで平成29年度はこの3種類について、研究分担者とともに植物ステロールからの合成を試みた。純度の高い植物ステロールがグラムスケールで必要であり、分離精製から困難を極めた。最終的にmgスケールのD5、D6、D7を合成し、これらを吸収試験に供することができた。 また、D2、D3、D4については先行して吸収試験を行っていたが、D4もD2、D3同様に吸収されること、吸収促進剤の効果が得られることを確認した。さらに、D2、D3は代謝産物である25-ヒドロキシ体と1,25-ジヒドロキシ体市販品が入手でき、腸管での代謝産物の確認を行ったが、これらに相当するピークは得られなかったため、腸管で代謝はされていない。今後、肝臓や腎臓モデルでの代謝を検討する。 今年度、脂溶性栄養機能成分(ビタミンD等の)についての生体利用性について執筆したshort communicationが雑誌に受理、掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
①ビタミンDの確保 D5、D6、D7の取得の難易度が非常に高かった。まず最初に、D3の前駆体からD3が合成できることを確認し、合成スキームを完成させた。次にD5-D7の合成を行うため、出発物質の植物ステロールの純度の高いものをグラムスケールで用意することを試みた。しかし、これは困難であった。高純度のものは売ってはいるが数mgでしかも高価である。安価で比較的量に余裕ある試薬を購入して分離精製を試みたが、様々な順相クロマト(シリカ、フロリジル、MgO、アルミナ等)ではグラムスケールで分離する事が出来なかった。そこで発想を変え、混合物のままD5-7を合成して、その後でmgスケールではあるが逆送HPLCで分離精製することでようやく目的物質が得られたものの、時間と労力を大幅にここに費やした。
②分析条件 入手済みビタミンD2-4についてはヒト腸管モデル細胞を用いての吸収試験を行った。吸収促進剤の効果や受容体の依存率も同時に調べている。一方、今年度入手できたD5-7についても同様に試験を行っている最中であるが、HPLC分析の際に、細胞からの抽出操作で添加する抗酸化剤のトコフェロールとDのピークが完全に重なるなどの問題があり、代替の抗酸化剤を用いることで解決したが、やはりここでも時間をロスする結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
入手できたビタミンD6種類については引き続き腸管吸収試験を行い、腸管吸収にかかわる因子(吸収受容体/トランスポーター)や、吸収促進成分(複合脂質)の効果等を調べる。今後の研究計画に基づきビタミンDの機能性を調べるためには、活性化体の調製・入手が必要である。すでに述べたように、活性体もD2、D3以外は自分で合成する必要がある。しかし、D5-7については、1mg程度しかないため、これを元に有機合成で活性化体を調製するのは不可能である。十分な試薬量を確保して代謝産物や機能性を調べる手法は断念せざるを得ない。
そこで肝臓や腎臓の培養細胞で代謝産物に変換される可能性を検討する。肝臓モデルHepG2と腎臓細胞株をトランズウエルの上下で培養するなどの工夫をすることで代謝産物の検出・定量を試みる。機能性についても、例えば前立腺癌細胞にビタミンDを添加すると細胞内で代謝産物が生成されて癌細胞の増殖を抑制するような実験系の工夫が必要になる。
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Causes of Carryover |
(理由)次年度使用額は、研究費を効率的に使用して発生した残額である。
(使用計画)次年度に請求する研究費と合わせて研究計画遂行のために使用する。
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