2016 Fiscal Year Research-status Report
軟らかい食物摂取により引き起こされる日本人型糖尿病の病態解析
Project/Area Number |
16K00911
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
伊達 紫 宮崎大学, 理事 (70381100)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 食物の性状 / 日本人型糖尿病 / インスリン抵抗性 / 膵β細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
軟食を3時間制限給餌で4週間、12週間あるいは24週間ラットに給餌しエネルギー代謝特性について検討した。軟食を摂取したラットでは、固形食を摂取したラットに比べ体重や摂餌量に差は認めず、体温、酸素消費量や行動量にも有意な差を認めなかった。一方で、軟食摂取ラットの内臓脂肪および皮下脂肪をCTで画像解析した結果、同ラットでは固形食摂取ラットに比べ内臓脂肪量、皮下脂肪量ともに有意に増加していた。また、4週間軟食で飼育したラットではインスリン値が高い傾向にあり、12週間および24週間軟食で飼育したラットでは、耐糖能試験において血糖値の推移が糖尿病パターンを示し明らかな耐糖能異常およびそれに伴う高インスリン血症を認めた。固形食摂取ラットにインスリンを投与すると肝臓でのAktのリン酸化が確認されたが、軟食摂取ラットではそれを認めなかった。軟食摂取ラットの肝臓では、高血糖や高インスリン血症がトリガーとなり中性脂肪の蓄積に機能する転写調節因子であるSREBP1cやChREBPの発現増加に加えその下流因子であるACCやFasnの発現も同時に増加していた。これらの知見は、軟食摂取ラットは肥満を示さないものの、糖尿病、高インスリン血症、インスリンシグナル伝達異常および脂質代謝異常を呈する日本人型糖尿病にきわめて近いモデル動物であることを示している。免疫組織化学的検討においても、4週間、12週間、24週間軟食を給餌したラットの膵臓の膵β細胞の過形成が確認され、36週まで軟食を給餌するとβ細胞は減少傾向を示すことが明らかになった。また、腸管のグルコーストランスポーターのタンパク発現を検討したところ、軟食摂取群ではSGLT1およびGLUT5の発現が固形食群に比べ有意に増加していた。次年度以降は、腸内細菌叢の変化や膵β細胞の過形成から減少に至る分子メカニズムの解明を目指し研究を展開させたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
軟食ラットのエネルギー代謝特性の評価、特に糖尿病の発症については早期からインスリン抵抗性の状態にあることが明らかになった。さらに、軟食給餌期間が長期化すると、膵β細胞が過形成から減少の過程を示すことも確認できた。軟食摂取による腸管で発現するグルコーストランスポーターにも有意な差が認められることを明らかにした。これらの結果は、軟食が引き起こす日本人型糖尿病の分子メカニズムを解明する上で基盤となる知見であり、次年度以降の研究につながる成果である。
|
Strategy for Future Research Activity |
腸内細菌の量および細菌叢の割合の変化を検討し、腸管での炎症性変化や細菌による食物繊維の分解産物である短鎖脂肪酸とインスリン分泌との関連を明らかにする。また、膵臓の組織学的知見を基に、糖尿病の進行とともに起こる膵β細胞の増殖から減衰に関与するメカニズムを分子レベルで検討する。
|