2018 Fiscal Year Research-status Report
食事誘導性概日ペースメーカー理論を応用した生活習慣病の一次予防戦略
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16K00912
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
大津留 晶 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (00233198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緑川 早苗 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (10325962)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 生活習慣病 / 食事時間 / 睡眠 / 体内時計 / メタボリック症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
生活習慣関連疾患のプライマリーケアにおいて、食生活の習慣改善は、運動などと並んで極めて重要である。しかし、災害後の復興期にある地域においては、ライフスタイルが変化せざるをえず、一次予防はしばしば実行することが困難となる。そこで、継続しやすい一次予防として、食事時間に着目し、それを規定する分子機序の進歩の情報収集のため学会などに参加した。また必要な機器や試薬を一部購入した。 生活習慣病の状況を把握するうえで、災害被災地域における、避難生活などに関連した生活習慣病の新規罹患調査が並行して進んでいる。肥満・高血圧・糖尿病などの生活習慣病が腎機能障害などの発症のリスクとなっていることが示された。本研究に関連するところでは、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)によると思われる肝機能異常の改善に、間食・夜食、食事のスピードなどの改善よりも、朝食を欠食しないことと、運動が大きく寄与しており、睡眠やメンタルヘルスの状況は関連が認められないことが示された(Medicine 97: 42e12890, 2018)。一方、喫煙者の割合は全体として下がっているが、メンタルヘルスと関連していることが示された(BMJ Open. 8: e018943, 2018)。 研究全体の概要としては、一般的には徐々に進行することが多い様々な生活習慣病が、被災後1~3年という短い期間で急激に進行する人がかなりいること分り、その多様性に関連して一次予防を解明することの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
東日本大震災後の被災者への健康調査による検討によると、当初予想していた睡眠の影響は、喫煙関連以外の生活習慣病関連のアウトカムに関連性がみられなかった。また睡眠と相関性の高いことが本調査でも示されているメンタルヘルスのリスクも生活習慣病の関連が認められていない。さらに体内時計と生活習慣病の関係を示す基礎研究に大きな進歩があり、当初研究で重要視していたマーカー以外にも重要なものが発見されており、中枢性と末梢性の光調整性の体内時計と食事誘導性の体内リズムとの関連の研究も進歩している。さらに時間シフトワーカーなによる疫学研究も進んでいる(Nature Rev Endocrinol 2019, Intern J Mol Sci 2019)。一方、我々の調査においても、生活習慣の乱れからメタボリック症候群や糖尿病などを発症するまでの時間経過が、予想に反してリスクが低いと想定されている人でも短い時間で生活習慣病が発症している人がおり、一次予防の介入がそれらにどのように影響するかをまず検討しないといけない。そのため研究計画にあるアウトカムとマーカーの空腹時の採血や睡眠リズムだけでは不十分である可能性が高くなっている。そこで予定を変更し、健康調査における生活習慣病の発症や改善のスピードとの再検討と、すでに行ったマーカー関連のデータを新たな研究の進歩に伴って二次利用し再解析する検討を優先しようと考えている。そのため当初予定していた睡眠ソフトによる解析や採血マーカーアッセイを控えており、その分の予算は使用しない可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
東日本大震災後の被災者を対象に、我々が行っている健康調査の結果では、肥満、メタボリック症候群、糖尿病、肝機能異常、高血圧、高脂血症、腎機能異常などの生活習慣病関連アウトカムに対し、避難が最も強い共通の交絡因子に挙げられた。避難は一般的な一次予防の食習慣の時間や回数、運動、禁煙、睡眠習慣などと強く関連しているが、細かく見ると食習慣や運動への影響が強く、睡眠習慣と喫煙は避難自体よりメンタルヘルスに直接関連していた。これらは震災後1-2年の結果であることより、その後の経過と一次予防との関連について、今後より詳細に検討する予定である。 また震災後1-2年以内に糖尿病を新規発症する人は、非避難者でも通常より増加していたが、避難者では非避難者の1.4倍多かった。しかし耐糖能異常のボーダーラインからの糖尿病発症には差がなく、避難の影響は正常~正常高値の群における差であった。避難という多因子のリスクファクターは、喫煙習慣には関係していなかった。また運動も肝機能異常の発症には寄与しているが、メタボリック症候群の発症には寄与が少なかった。これらは震災後に一時的に悪化したものと生活習慣病を発症したものの複合であるため、生活習慣病の改善がみられた群において、一次予防との関連を見る必要があると考えられる。 また近年の基礎研究の進歩により、グレリンが食事誘導性概日リズムに対し迷走神経求心路を介さない経路で摂食中枢に働いていることが推測されている。これらの進歩とすでにデータがある結果を合わせて分析し、人におけるマーカーと考えているグレリンやレプチン、インスリンと食事誘導性リズムとの生理的関連についても明らかにしてゆきたい。
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Causes of Carryover |
これまでの健康調査の結果と基礎研究の進展を考慮すると、疫学研究と基盤研究の機序の整合性をとる当初の研究計画どおりの進捗が難しかった。 現在の結果を発展させて分析を追加し、発表・論文作成を進めるために、解析ソフトや英文校正などに予算を用いる計画である。研究に使用しないキットなどの予算については辞退する可能性がある。
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[Journal Article] Effects of lifestyle on hepatobiliary enzyme abnormalities following the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident: The Fukushima health management survey.2018
Author(s)
Takahashi A, Ohira T, Okazaki K, Yasumura S, Sakai A, Maeda M, Yabe H, Hosoya M, Ohtsuru A, Kawasaki Y, Suzuki H, Shimabukuro M, Sugiura Y, Shishido H, Hayashi Y, Nakano H, Kobashi G, Kamiya K, Ohira H.
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Journal Title
Medicine (Baltimore)
Volume: 97
Pages: e12890
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Associations of disaster-related and psychosocial factors with changes in smoking status after a disaster: a cross-sectional survey after the Great East Japan Earthquake.2018
Author(s)
Nakano H, Ohira T, Maeda M, Yabe H, Ohtsuru A, Suzuki Y, Harigane M, Horikoshi N, Nagai M, Zhang W, Takahashi H, Yasumura S, Iso H, Kamiya K
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Journal Title
BMJ Open
Volume: 8
Pages: e018943
DOI
Peer Reviewed / Open Access