2016 Fiscal Year Research-status Report
ロービジョン者のQOL向上を目指した快適な食生活のための色彩提案
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16K00929
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
冨田 圭子 近畿大学, 農学部, 准教授 (20381931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安岡 美総 近畿大学, 農学部, 契約助手 (90780809)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ロービジョン者 / おいしさ / 視認性 / 給食 / トレイ / 色彩 / 食卓 / 皿の縁取り |
Outline of Annual Research Achievements |
ロービジョン者の食事中の見え難さを軽減するための補助具がいくつか販売されている。それらの商品を見てみると、明度差の大きい白黒配色の商品が多く、おいしさの重要な因子である彩りに対する配慮が少ない。そこで、我々は視認性と共に、視覚的おいしさを向上させる食卓の色提案を行うことを目的に調査をおこなった。本年度は皿と背景色の境界をわかりやすくする皿の縁取りに着目し、その最適な太さを検討した。 食器の縁どりの太さは、業務用食器カタログに掲載されていた約5600皿から、縁どりの太さとして頻度の高かった2、4、8、16mmに加え、縁取りなし(0 mm)の計5種類とした。縁どりの色は、給食施設で使用頻度の高い白色食器に対して最も明度差のある黒とした。加えて背景色(トレイ)の色は、先行研究で視認性かつおいしさの評価が高かったブライトトーンの橙色とした。これらを組み合わせた画像をLCD画面上に投影し、12形容詞対7段階SD法を用いて視認性および視覚的おいしさの検討をおこなった。調査対象者は、ロービジョン者ではなく、ロービジョンシュミレーション眼鏡を着用してもらった者をロービジョン者、着用しなかった者を健常者とした。 SD法で得られた結果を因子分析に供したところ、快適性と視認性の2因子が抽出された。この2因子を縦軸と横軸に配し、縁取りの太さごとに座標上にプロットしたところ、ロービジョン者は8mmが、健常者は4~8mmが快適性・視認性共に高評価であることが明らかになった。加えて今回最も縁取りが太かった16mmの評価をみると、皿の余白(料理以外の面積)が少なくなることでかえって視認性を低下させ、さらに圧迫感をもたらしていることから、快適性・視認性ともに低評価となっていることが示された。これらのことより、ロービジョン者・健常者共に相応しい皿の縁取りは、8mmであると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
背景色と皿の色の配色効果についての検討は、給食施設で最も使用頻度の高い白皿と、快適性・視認性の高いブライトトーンの橙色を使用することで研究の進行をスムーズに進めることができた。この進行により、当初は考えていなかった視認性向上にとって重要となる縁取りに関する研究に着手することができた。ただし、学会等への発表にまでは至らなかった。これらのことから、研究自体は概ね順調に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、縁取りの色と背景色の色の組合せを検討し、ロービジョン者・健常者共に快適で視認性の高い食卓の色彩提案をおこなう。
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Causes of Carryover |
縁取りに関する研究が有意義であったことから、その公表を国際学会(2017年8月開催:エントリー済)でおこなうこととしたため、2017年に旅費の使用を延期することとした。そこで、若干の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度の研究成果を発表するため、旅費として使用する。
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