2016 Fiscal Year Research-status Report
カンピロバクター食中毒の発生に寄与する二次汚染要因の探索
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16K00941
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Research Institution | Osaka City Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
中村 寛海 大阪市立環境科学研究所, 調査研究課 微生物保健グループ, 研究主任 (00332445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 純 宮崎大学, 農学部, 准教授 (00437948)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | カンピロバクター / 遺伝子検査 / 飲食店 / 二次汚染 / 食中毒 / ふきとり |
Outline of Annual Research Achievements |
カンピロバクターはわが国における主要な食中毒原因細菌であり、その事件数は近年増加傾向にある。カンピロバクター食中毒の多くは生あるいは加熱不十分な鶏肉の喫食が原因と考えられており、原因の約40%は鶏肉と考えられているが、残りの60%は原因不明とされる。また、これらの多くは喫食状況等の疫学調査で特定されており、原因食品や原因施設のふきとり材料から本菌が分離されることは極めて稀である。カンピロバクター食中毒の原因施設としては、焼鳥店や居酒屋を主とした飲食店が最も多く、飲食店等を中心とした予防対策が求められている。そこで平成28年度は、大阪市内の飲食店5施設および鶏肉店1施設から採取したふきとり材料からカンピロバクターの検出を試みた。カンピロバクターの検出には、培養法として直接塗抹法および2種類の増菌培地による増菌培養法と、3遺伝子(flaA, cadFおよびcdtB遺伝子)をPCR法で検出する遺伝子検査法を試みた。その結果、61検体のうち培養法で2施設由来7検体、PCR法で6施設由来20検体がカンピロバクター陽性と判定された。培養法では鶏肉そのものおよび鶏肉取扱中の調理環境からのみカンピロバクターが検出されたのに対して、遺伝子検査法では使用前の調理器具および調理環境からもカンピロバクターが検出された。食中毒発生直後の飲食店では採取した全ての検体からカンピロバクター遺伝子が検出された。今後さらなる検討が必要であるが、カンピロバクターが「生きているが培養不能な状態(VBNC)」となって飲食店の調理環境に潜んでいる可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
飲食店のふきとり材料におけるカンピロバクター検出を培養法および遺伝子検査法によって実施し、一定の成果を得ることはできた。しかしながら、当初計画では、ふきとり材料にEMA処理をしてカンピロバクター遺伝子が生菌あるいは死菌由来かを区別した上で、リアルタイムPCR法による定量的な検出法を確立する予定であった。また、調理従事者便からのカンピロバクター検出が未実施となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果で、飲食店のふきとり材料から実際にカンピロバクター遺伝子が検出されることが明らかとなった。次年度は、検出されたこれらの遺伝子がカンピロバクター由来であるかどうかを精査するとともに、検出された遺伝子間の比較を試みる。また、ふきとり材料からリアルタイムPCR法によるカンピロバクターの定量的な検出法を確立し、EMA処理によってカンピロバクター遺伝子を生菌と死菌に区別した上で評価をしたい。また、2015年以降に食中毒患者便から分離されたカンピロバクター菌株について、mP-BIT法による遺伝子型別を試み、クラスター解析を実施する。
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Causes of Carryover |
平成28年度に購入を予定していた生物顕微鏡が研究所費で更新されたことから、購入の必要がなくなり、予定していた70万円を設備備品費以外に充てることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に予定していたリアルタイムPCR法によるカンピロバクター検出法の検討を次年度に実施する予定であり、このために必要な光照射装置の購入やリアルタイムPCR用の試薬であるプライマー、プローブなどの消耗品購入、またこれらをデザインするための費用に充てる。
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