2016 Fiscal Year Research-status Report
染料を教材とした,学習内容と実生活を関連づける探究的な理科授業プログラムの開発
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16K00950
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
日置 英彰 群馬大学, 教育学部, 教授 (00208737)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 探究的な学習活動 / 高校化学 / 染料 |
Outline of Annual Research Achievements |
理科を学ぶことの意義や有用性を実感する機会をもたせ,科学への関心を高める観点から,授業の学習内容を実社会・実生活と関連づけることは非常に重要である.そこで本研究では視覚的にも興味深い染料を教材とし,授業で学ぶ内容を参照しながら高等学校化学の授業で探究的な学習活動が行える授業プログラムを開発することにした. 一般に化学実験では,用いる試薬等があらかじめ決められており,それに沿って実験を行うこととなり,生徒自身が実験の計画を立てることがむずかしい.そこで生徒が自ら合成する化合物をデザインし,そのデザインした化合物を実際に合成し,化学構造と色の違いを探究的に理解できるプログラムの開発をめざした. 有機化合物の化学構造とその機能には密接な関係があり,特に官能基はその性質を決める重要な役割を果たしている.色素においても同様で,基本となる発色団に助色団となる官能基を導入すると色調が大きく変化する.そこでまず,インジゴを発色団とし,そこに種々の官能基を導入して様々な色調をもつインジゴ誘導体の合成法を確立することにした.これまでにもインジゴ誘導体の合成は報告されているが,どの方法も有機合成のための特別な実験装置が必要であり,高等学校の理科の授業で行うことはできない.そこでまず,高等学校の理科室で実施可能なインジゴ誘導体の新たな合成法を確立することとした.これまでの研究結果から3段階で多くのインジゴ誘導体が合成できる経路をおおむね確立することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は高等学校の理科室で実施可能なインジゴ誘導体の新たな合成法を確立に注力した.多くの実験条件を検討した結果,2~3段階の反応で6種類のインジゴ誘導体を簡単に合成できる方法を見出した.この合成経路は,分液ロートやロータリーエバポレーターがなくても,単純な加熱,ろ過,再結晶で目的物を得ることができる.空気中の酸素や湿気の除去も必要ない.また,比較的安価な原料から合成することもできる. 授業実践に先立ち,大学生を対象にした模擬授業実践から,解決すべき課題もでてきた.結晶の粒子が細かく,ろ過に多くの時間がかかり,授業時間内におさめることができないことがわかった.実施方法についてもう少し検討する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
理科室で実施可能な合成経路については,ほぼ確立したが,授業時間内で生徒が仮説の設定,実験の計画,実験による検証,実験データの分析・解釈といった一連の探究的な学習活動を行うためには,実験条件のさらなる検討が必要である. 本年度はこれと並行して,学習テキストの作成に取りかかる.本プログラムに関連する学習内容は,官能基の性質,有機化学反応,触媒,酸と塩基,物質量,物質の三態,酸化と還元,酸と塩基,化学平衡,光とエネルギーなど多岐にわたる.これらが本プログラムを通して実社会・実生活とどのように関わっているのか明らかになるようなテキストとしたい.
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Causes of Carryover |
一部の試薬が輸入品であったため,納入が次年度に繰り越されてしまった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度早々に納入される予定である.
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